山形にでかけた家族が、サクランボを土産に持ち帰った。つやつやした淡い赤。どこか懐かし
い甘酸っぱい味。春先の天候不順などの影響で、例年より2~3割高いそうだ。
朝顔も今ごろの風物詩。週末の6日から東京・入谷で恒例の朝顔市が始まり、約15万
鉢が並ぶ。こちらも春の寒さで生育がもう一つ。ただし、花の付きはいつもの年に比べ、いいら
しい。9~10日は近くの浅草観音のほおづき市である。
〈春から夏にかけての風物詩のように、ふわふわと飛来してくる「謎の気球」〉という記事が
数日前の本誌北海道版に出た。この気球、白色のビニール製で長さ6~8m、直径
3m前後、タイマーと円筒状の直径10cm、高さ15cmほどのプラスティック容器がひもで
ぶら下がっている。
毎年、少なからぬ数が空から降って来る。今年末に30個以上。去年は70個だった。
北海道警によれば、初めて気球が確認されたのは、1983年、爆破装置などは付いていないが、
5月には気球の気体が爆発し、親子3人が怪我をした。木に引っかかっていた気球を取って、
車のトランクに入れた途端爆発したこともある。
北海道だけではない。関東から東海、近畿、中国と、実は数年来、全国で見つかっている。
神奈川ではことし、20個以上になった。飛来元は朝鮮半島の可能性が強い。タイマーにハングル
で、「安全装置」と書かれていた例がある。福岡県久留米市で先日見つかった気球は、箱入りの
「即席肉スープラーメン」と「南」の豊かさを描いたビラが4枚、本体の下のナイロン袋に
入っていた。
この限りでは、「北」向けの宣伝が目的みたいに見える。しかし、それにしては効率が悪すぎ
ないか。さらに、大部分の気球には、何の手がかりもない。形状が微妙に違うものもある。
お化けののっぺらぼうにも似た、剣呑な風物詩だ・・・。
備考:この内容は、1997-4-15 朝日新聞論説
委員室著「天声人語」より紹介しました・・・。