
高校生の時、中華料理屋でバイトをしていた僕は、よく、ラーメンや
チャーハンなどを作り、お客さんに出していました。
その日は、客が少なかったので、早めに閉店の準備をしていました。
しかし、閉店間際に家族連れが来ました。彼らはラーメンと餃子を注文し、
僕はさっそく調理に取り掛かりました。

「カチッ! カチッ!」
ところが、ガスコンロの火がつきません。
「あれ? なんでだ? あっ、ガスの元栓を閉めたんだ」
そう、気づいた、僕は、ガスの元栓を開けました。
「シュー・・・」
しかし、種火が消えていたので、火は付きません。
お客さんを待たせてはいけないと焦った僕は、ライターを持ち出し、コンロに向けて、カチッ!

「シュド~ン! ボワ~ッシュ!」
自分の眼下に広がったあの光景は、今でも忘れることができません。
大量に放出されたガスは、ライターから直に引火し、僕の腕から顔にかけて、
火が駆け上って来ました。もちろん顔は火傷し、まつげ、眉毛は全焼。

パニックに陥った僕は、とりあえず顔を水で洗い、痛みを抑えようと必死でした。
そして、顔を冷やすと、何事もなかったかのように、調理に取り掛かりました。
しかし、あまりにも衝撃的な光景を目の当たりにした家族連れは、
「もう、料理はいいから病院に行きなさい!」
とやさしい言葉をかけて、帰って行きました。
しばらく、バイトを休ませてもらった後、久しぶりに行くと、その店はつぶれていました。
●ぬかと思った・・・。
備考:この内容は、2010-7-22 (株)アスペクト
林雄司編 『●ぬかと思った7』
「よたろう 20歳 男」さんより紹介しました・・・。