ピッ! ピッ! ピッ! ピッ!
血がしたたり落ちてる・・・。
「わーっ! ギャーっ! おえーっ!」
「シんでる! 女がシんでる! わわわわーっ!」
自分は会場からここまで、だいたい30分くらいで
来ている訳だ・・・。
女性は、自分より30分くらい前に出てるから、
単純に計算して事故があったのは、30分くらい前
と、言うことになりますよね。
でも、この状況を見ると、どうやら事故の後、
一台も他の車は、通過してないらしい・・・。
自分が、第一発見者だ。
震える手でもって携帯出して
救急車と、パトカー呼んだ訳だ・・・。
すると、向こうで「お名前は?」 とか聞かれたので、
自分の名前と、そして、所属している会社名を告げた。
すると先方が、
「我々が到着するまで、現場の確保をお願いします!」
と、言ってきた。
「えっ!? 現場を確保する?」
と、言うことは・・・
全く人気のないこの山ん中、
夜の黒い闇に包まれて、濃い霧が降っている。
そこで血に染まった女性の車、
この場所、この番をしてろって訳だ・・・。
冗談じゃない!
自分は帰りを急いでいる・・・。
「えっ! 勘弁してくれ! イヤだな! 弱ったな・・・」
と、思った。
でも・・・、いまさらどうすることもできない。
自分は名前も言っちゃったし、会社名も言っちゃったし、
おそらく、この携帯電話の番号、向こう側わかってますからね。
「いや~、参ったな・・・」
他の車でも来れば別なんだけど。
この状況ですから、たぶん、止まって話ぐらい出来るでしょうけども・・・。
ちょっと、もう期待できそうもない。
「いや~、参ったな・・・」 と、思った。
30分ほど前に亡くなっているとすれば、
まだ、うっすらと温もりが残っている・・・。
生温かい 女性のシ体だ。
それが、ぶら下がっている訳だ・・・。
それが、車の中に・・・。
つづく
備考:この内容は、「You-Tube 稲川淳二
怪談30話321分」より紹介しました・・・。