「青春は、若者に無駄遣いさせておくには、あまりにも惜しい」
そう言った人がいます。
イギリスの劇作家・批評家のバーナード・ショーです。
いかにもショーらしい、辛辣な言葉ですね。
ショーはなかなかいいことをいうのですが、しかしわたしはこのことばには同意
できません。だって、これは、年寄りの愚痴ではありませんか。年寄りはいつも若者を
「なっていない」と評しているのですね。
エジプトで考古学者が4000年前の碑文を発掘しました。その古代文学を解読すると、
「いまどきの若い奴らはけしからん!」
と書いてあったそうです。
勿論、これはジョークですよ。でも、そういうジョーク
が語られているほど、年寄りと言うのは古今東西を問わず、ひがみっぽいのです。
そんな年寄りのひがみのことばを信用してはいけません。
だからショーはまちがっています。
青春というものは、無駄遣いすべきものなのです。
青春はビールで、老年は日本酒です。わたしはそう思っています。
日本酒は小さな杯でちびちびとやって風情があります。でも、ビールは、小さな杯で
飲んでも、いっこうにおいしくありません。ビールは大きなジョッキで、ぐあっとやって
うまいのです。ときには頭からビールをかけたりして、そういう無駄遣いが青春の特権です。
青春を無駄遣いせず、ちびちびと味わっていてはだめですよ。
私はそう忠告します。
けれども、それじゃあ、簡単に無駄遣いができるかといったら、それはそうでは
ありません。無駄遣いって、あんがいにむずかしいのですよ。
それはお金の無駄遣いを考えてもわかるでしょう。変なことをすれば、あとで
「しまった」と思います。しまった・・・と思わないような無駄遣いって、これは非常に
むずかしいのです。下手をすると、ドブに金を捨てるようなことになってします。
青春もそうです。投げやりになって、ドブに青春を捨てるような生き方はしないで
ください。かといって、ちびちびと、あるいはじくじくと、青春を不完全燃焼させるような
こともやめましょうよ。
青春を痛快に無駄遣いしてください。
それが若い人の特権なんですから・・・。
備考:この内容は、1994年4月8日発行 ひろさちや著
「こころのもたもや晴れたらいいね」より紹介しました。