「背中に絵が描いてあるよ!」 32歳 独身
それは私が高校生の時だから、もう15年以上前の話になります。 私には8歳年下の
弟がいるんですが、その弟を連れて銭湯に行ったある日のこと、浴場に入ると
いきなり目に入ってきた、洗い場に並ぶ見事な入れ墨入りの背中×3!
「やべっ、怖えっ」と私は弟の手を引き、鏡の中の彼らの視線を避けながら後ろを
通り過ぎようとしました。
と、その時! まだ小学校低学年だった弟が無邪気に
「お兄ちゃんっ お兄ちゃんっ 見てっ! 見てっ! 背中に絵が描いてあるよ!」
と浴場中に響き渡るような声で叫ぶじゃないですか!
一斉に振り返る角刈り&パンチ&スキンヘッド!!
私がひきつりながら会釈すると、その場は3人とも「ニヤリ」と笑っただけで
許してくれました。
しかし、本当に怖かったのはその後です。
私は弟になんて注意すればいいのかもわからず、ぼーっとしながら湯船に入ろうと
していました。すると、3人の中で一番年配(40~50歳)で一番見事な絵入りの
角刈りさんが、「キッ」とこっちを睨んでスタスタ近寄ってくるじゃないですか!
「うわっ なにっ? なにっ?」
と怯えまくっている私のところまで来た角刈り
さんは、なんともいえない複雑な笑み(鮮明に覚えてるなぁ、この時の顔)を
浮かべながら・・・、
「あんちゃん、湯船に入る時はケツとキ★タマぐらい洗おうや・・・なぁ」
と言ってポンっと肩をたたくと、洗い場に戻っていきました。
ふ~、死ぬかと思った
(湯船に少しちびったかも・・・?)
備考:この内容は、2011年4月29日発行(株)アスペクト 林雄司編・著
「死ぬかと思った 2」より紹介しました。