文学作品を映像化する際には、原作を多少、改変する場合がある。たとえば、
人気アニメ「アルプスの少女ハイジ」の場合、原作と異なる点がいくつかあるのだが、
その1つが、主人公ハイジと暮らす「アルムおんじ」のキャラクターだ。
「アルム」とは、アルプス地方の牧草地のことだから、「アルムおんじ」は
「牧草地のおじさん」という意味で、名前は伏せられている。これは、原作もおなじ。
ただし、原作には、おんじの過去も描かれていて、これがなかなか波乱万丈なのだ。
生まれは、ドムレシュクの裕福な農家。青年期は金持ちの不良息子で、周囲に
いばりちらし、生活は荒れ放題。後を継いでからは、酒とギャンブルに明け暮れて、
農場を手放すはめになり、これがもとで両親が死んでしまう。放浪の末、ナポリで
軍隊に入るが、ケンカであやまって人を殺し、軍を脱走してしまう。
その後、15年の放浪生活の末、結婚して息子を授かるが、今度は妻を亡くす。
デルフリ村にやってきて、大工として暮らし始めるが、今度は、仕事中の事故で
息子を亡くしてしまう。
このように不幸が続くのは、おんじが神を畏(おそ)れない暮らしをしてきた罰だと
して、村人たちは懺悔を迫るが、おんじは、それに反発し、誰とも口をきかなくなって
しまった。あの偏屈さの影には、そんな過去があったのだが、宗教的な背景が関係
することなのでアニメ化にあたっては、大幅カット。おんじは、ただの偏屈
じいさんとして描かれている・・・。
備考:この内容は、2012年3月30日発行 夢の設計社 著
「誰に話してもすべらない雑学」より紹介しました。