時刻表のさくいん地図を広げていると、変わった駅名や楽しい駅名、ちょっと読めない
駅名など、ユニークな駅名にたびたび出くわす。
山形県の奥羽本線にある及位駅。実はこれで”のぞき”と読む。難読駅名の一つである。
漢字で表記してあるからいいようなものの、ひらがなで書いてあると、ちょっと恥ずかしく
なるような駅名ではなかろうか? はずかしくなるだけならいいのだが、「昔はそんな悪さをした
なぁ」と頭をかいてもらっては、せっかくの由緒ある駅名が泣いてしまうかもしれない。
山形県を縦断する奥羽本線の、同県内最北端、
秋田県都の県境にも近い及位駅。観光
スポットからも外れているため、普通電車しか
止まらない小さな駅(もっとも、今、
この区間には普通列車しか走っていないけれども)
だが、その駅名のインパクトのせいか、
鉄道ファンには広く知られているようだ。
もちろん及位駅は”のぞき”などではなく、
「及位」という古い地名から取られている。
近くに温泉郷もある及位の地名の由来は、
数多くの説があり、1つに定まらないが、
いかにも東北の山里らしい伝説として残っているのは、
大蛇を退治した修験者からきた
というもの・・・。
大昔、この地の山につがいの大蛇が住んで
おり、村におりてきては田畑を荒らし、
娘をさらっていったという。見るも恐ろしい大蛇であったがため、反抗することもできず、
村人は何百年もの間、苦しめられ続けていた。そんなある日、村に一人の修験者が洗われた。
そして修験者は、山の神の協力を経て、つがいの大蛇を沼に封じ込めると、大蛇のいなく
なった山にこもり”のぞき”と呼ばれる厳しい修行にに勤しんだという。
後にこの修験者は、京に昇って位の高い僧侶になったらしく、”のぞき”の修行によって、
高い「位」に「及」んだことから、村人たちが修験者の功績をたたえ、当地に「及位」と書いて
”のぞき”と読ませる地名をつけたのだと、伝説は締めくくっている。
”のぞき”とはどんな修行か想像もつかないが、厳しい修行というからには、鼻の下を伸ばす
ようなものではなかったであろう・・・。
備考:この内容は、2009年11月30日発行 KKベストセラーズ
「鉄道雑学」より紹介しました。