迷いを振り切れ
2011年9月29日。日本女子オープンが開幕した。優勝者は女子
ゴルファー日本一とたたえられる、国内最高峰の大会だ。昨年の
優勝者として挑む宮里、自分との戦いが始まった。
初日、狭いフェアウエーにティーショットがたびたびラフに入って
しまう。普段なら果敢にピンを狙って行くはずだが、宮里は刻んで
安全策をとっていた。2日目も確実にパーを狙う戦いを続けた。そこには
自分の決めた戦い方を貫く宮里の姿があった。結果、他の選手が
スコアを落とす中で、1オーバー。単独トップで決勝ラウンドに進んだ。
「2日目を終えた時点で、なかなかバーディーを取れるようなコースでは
ないと思いました。パーがバーディーみたいな感じ。そういった意味
ではすべてパーをとれたのは良かった」
ところが3日目、宮里は”高速グリーン”に手こずっていた。初日、
2日目に比べグリーンが固くなり、ボールが止まらないのだ。さらに
風速6mを超える強風に悩まされ、我慢のゴルフが続いた。15番、
パー5.フェアウエイをキープした第2打。ここで宮里に「攻めたい」と
いう気持ちがよぎった。飛距離が出る3番ウッドを手に取り、数秒。
宮里はそれを距離を押さえる7番ウッドに持ち替えた。
「この難コースでは、パーはバーディーと同じ」
この2日間、自分に言い聞かせてきた言葉を思い出していた。
迷いを振り切って打ったボールは、狙い通りの場所に落ちた。
自分を信じて打った一打は、価値あるバーディーを導いた。
自分のゴルフを求めて
トップと4打差の5位タイ、まだ優勝を狙える位置で迎えた最終日。
宮里に試練が待ち受けていた。1番、パー4.フェアウエイからの
第2打がバンカーに入った。3打目も乗らずダブルボギー。スタートで
つまずいた宮里は、その後も思い通りのゴルフができなかった。
「ボギーが出たら、ずるずる行ってしまうコースなんです。どこでブレーキ
をかけるかがキーだったと思うんですけど、それができなかった・・・。
あそこに打てばいいという思いと、あそこに打っても難しいんじゃないか
という思いがあって、半信半疑の部分があったんだと思います。」
宮里は最終日、スコアを11落とし、20位タイで大会を終えた。迷いを
振り切り、自信をもって打つこと。その課題の大切さを身をもって
感じた大会となった。
「ゴルフ自体は毎年成長していると思うし、あと一歩のところまで来て
いると思うので、自分のゴルフに自信を持って、試合で結果を残す。
そして、いつかメジャーでタイトルを取れるよう、頑張ります」
「世界一のゴルファーになる」と、10代でアメリカに渡った宮里。
その夢をつかむまで、戦いは続く・・・。
つづく
備考:この内容は、2012-2-23発行、NHKサービスセンター著「NHKアスリートの魂・
逆境を乗り越えた10人」より紹介しました。