第弐話
シンジとレイ、二人だけの密室
怒涛の展開の第壱話と違って、落ち着いた印象を受けるのが第弐話「見知らぬ、天井」
である。内容をあまりにも直接的にじましていた「使徒、襲来」とは、違って『新世紀
エヴァンゲリオン』らしい詩的なイメージのサブタイトルのつくこの回は、幻想的で美しく、
『エヴァ』の世界観を高め、なおかつ作品全体を通して繰り返し現れて重要な枠わりを
演じる、いくつかのシーンが初めて現れる。順を追って見ていこう。
一つ目と二つ目は、激しい上に一筋縄ではいかない使徒との戦闘で負傷したシンジたち
が運び込まれる病室に見つけることが出来る。この病室はシンジとレイの交流の場所に
なっている。彼らの深い結びつきがフィルム上に表現される場所なのだ。
冒頭の、使徒によって左腕部と頭部を破壊されて沈黙してしまった初号機の惨状から
一転して、夏の午前中を思わせる淡い光に満ちた病室でシンジは目覚める。おそらく本来は
6人部屋として使用されるのだと思わせる広い部屋にぽつんと1台だけベッドの置かれて
いる光景。激しい使徒との戦闘があったことなどまるで感じさせない放心的な一時。
目覚めたばかりでまだ夢と現実の合間でぼんやりとしているシンジの様子が、窓外から蝉の
鳴き声とラジオ体操のテーマが聞こえてくる静かで淡い光の中で描かれることによって、
夢幻的な空間となっている。
実際にこの病室は夢幻的な空間だろう。使徒との戦闘という非日常と、ミサトとの
共同生活や学校の持つ日常との合間にぶらさがった中途半端な空間なのだから・・・。
この病室
(レイアウトの同じ別の部屋もある)には、戦闘によって意識を失ったシンジとレイが
このあと何度か運び込まれ、目覚めることになる。アスカはここでは目覚めない。第16話で
シンジの様子を見に入口までやって来るが入ってこない。特権的な場所ゆえに入れない
のだ。精神崩壊後も、彼女が入れられるのは狭苦しい普通の病室だ。
備考:この内容は、史輝出版 ヤナミレイア著 「エヴァンゲリオン解体新書」
より紹介しました。