AKB48をリードする二人の、激動の日々と深まる絆
2011年も快進撃が続き、
年間シングル売上の
トップ5を独占して、第53回日本
レコード大賞を受賞したAKB48。
その国民的アイドルグループ
の人気を引っ張ってきたのが、
前田敦子と大島優子だ。
テレビのワイドショーや
スポーツ新聞などで、ファンの一般投票
によるAKB48選抜総選挙の結果
が華々しく報道されるたびに、
「AKB48のトップは前田、その次が
大島」という構図で見ている人が
多い。だが、総合プロデューサーの
秋元康氏が「総選挙は年に一度
のお祭り」と語って来たように、
人気のバロメーターではあるが、
総選挙の順位は、あくまでも一つ
の側面でしかない。AKB48を
これほどの人気グループのした
立役者は、前田敦子と大島優子の
”ツートップ”であり、どちらが欠け
ても、AKB48はここまで大きな
存在にはなれなかっただろう。
前田は昨年も、じゃんけん大会
で選抜メンバーが決まる「上から
マリコ」を覗除く、すべてのシングル
においてセンターポジションで
歌い、絶大な支持を集めた。大島
は、AKB48が起用されたCMの
多くに参加して、ソロでの起用も
増えたことから、出演は19社に
達し、タレントCM起用者数・女性
部門(ニホンモニター調べ)で
第1位に輝いた。
本誌では初となる、2人の対談
が実現。激動の2011年と、
2012年への抱負を聞くととも
に、それぞれ一人ずつのインタビュー
ではあまり語られることが
ない、プライベートでの二人の交流
についても話してくれた。
大島優子> 2011年は、どんな
年でしたか?
前田敦子> 日本レコード大賞を
いただけたのは、うれしかったよね。
大島> 受賞が発表されて、号泣
していたのは、あっちゃん(前田)と、
たかみな(高橋みなみ)と私だけ
だったみたいだけど(笑)。
前田> みんな、わーって泣いてる
と思ったんだけど、あとから聞いたら、
その3人だけだった、って。
でも、みんなが泣かなかった理由
は、わかる気がするんです。大賞
が発表されて名前を呼ばれた瞬間、
みんな、すごく緊張していたので、
えっ!って驚きすぎて、逆に冷静
になったんだと思います。
大島> 私は、嬉しすぎて気持ち
が舞い上がってしまって、とても
冷静にはなれなかったです。あの
ときの気持ちは、絶対に忘れない
な。一昨年も、「レコード対大賞を
取って、秋元(康)さんにプレゼント
したいね」って、メンバーみんな
で言ってたんですけど、取れな
かったので、今年こそ、頑張って
取ろう・・・って誓い合ったんです。
だから、大賞をいただけて、
プレゼントできたのが、本当にうれ
しかったです。
震災で絆が深くなった
11年にAKB48が行なった、様々
な活動の中で、忘れられないのが、
3月に起きた東日本大震災の
被災者救援のために展開した、
チャリティー活動だ。震災の影響で、
3月末に予定していた横浜アリーナ
でのコンサートは中止になり、
施設の復旧と安全点検のために
AKB48劇場は一時休館。一方で、
メンバーたちは「誰かのために」
プロジェクトを立ち上げ、配信
限定チャリティーソングの配信や
被災地でのミニライブなどを行い、
ファンからの募金を合わせて、
約6億円の義援金を寄付した。
前田> もうすぐ、1年ですね・・・。
早いですね。何が起こるか分から
ないと、いまだに思います。
大島> AKB48は、女優や歌手
など、それぞれ自分の夢に向かって
活動してきましたが、震災が起き
て、誰かのためにも何かできる
ことをやっていきたいと思っただけ
でなく、グループのなかでも、
絆が深くなった。大切にしていきたい
な、と感じました。
前田> 震災のあと、何かしなきゃと
思いながらも最初は何をしていい
のかわからなくて。
大島> 私たちに出来ることがない
かと、ずっと悩んでいて、もどか
しかったんだよね。
前田> そのときに、チャリティー
活動をしようと、きっかけを作って
くれたのは秋元さんです。私たち
にも、できることがあるんだ、
って思いました。今年も引き続き
活動を行なって行くことは、私たち
の目標です。
6月には、3回目となるAKB48
選抜総選挙が行われた。これまで
09年の第1回は前田敦子が
1位、10年の第2回は大島優子が1位
を獲得。そして、11年は前田敦子が
1位を奪回した形となり、
大島優子が2位となった。日本
武道館で行われた開票イベントでは、
トップメンバーゆえに、どうして
もアンチファン層が増えている
ことに対する前田の「私のことは
嫌いでも、AKB48のことは嫌いに
ならないでください」という言葉
が話題を集めた。前田の1位が
発表されて、前田が涙ながらに
「AKB48を引っ張ってきたのは、
私じゃなくて優子だと思っています」
と、語ったのに対して、司会の徳光
和夫にコメントを求められた大島は、
「あっちゃんは、AKBの顔
です。あっちゃんが笑顔で前を
向いていてくれれば、それでいいです」
と述べた。日頃から互いの
ことを尊敬しあい、大切な存在
だと思っていると語ってきた二人の
関係が、言葉の中に滲み出て
いる、印象的なシーンだった。
大島> あのときも言葉によって、
”AKB48”を引っ張っていこうね”
っていうお互いの気持ちを再確認
できましたね。
前田> 私たちが認め合っている
ことを、ファンの人たちの前で言う
ことができてよかった。ファンの
人たちにも、私たちを認めて
ほしいと思いました。
お互いのソロ活動を観て
11年は、ともにソロでの女優活動
でも活躍を見せた。前田は、
『もし高校野球の女子マネージャーが
ドラッガーの「マネジメント」を
読んだら』で映画初主演を果たし、
『花盛りの君たちへ~イケメン
☆パラダイス2011』にも主演
した。大島は、フジ系月9ドラマ
『私が恋愛できない理由』に、
香里奈・吉高由里子とともにメイン
キャストの一人として出演。恋に
臆病な女性を好演して、話題を
集めた。お互いのソロ活動について
は、テレビや雑誌を通じて、よく
観ていたと語る。
前田> 客観的に見て、すごいなと
思いながら、(大島)優子が出ている
ドラマを観てました。お互いが、
がんばれているのは、うれしいです。
大島> 個人の活動をがんばっている
と、AKB48に帰ってきたときの
力になるんです。あっちゃんが
活躍している様子を見ていて、
AKB48以外でも頑張っているな、って
思えて、私もうれしかった。
前田> 『私が恋愛できない理由』
の最終回は、Google+で
実況しながら、リアルタイムで見て
ました。
大島> 月曜日の夜に、二人で
ごはんに行ったことがあって、「優子
のドラマを観ているうちに、
すっかり優子との約束を忘れてた」
ってGoogle+でつぶやいてから、
待ち合わせ場所にあっちゃん
が遅れてきたのが面白かった(笑)。
前田> そういうこともありました。
大島> あっちゃんの『イケメン
パラダイス』も、よく見ていました。
前田> 優子から「キスシーンって、
どういう感じなの?」って質問
されました(笑)。
大島> 私はキスシーンをしたこと
がなかったので、そこにおいては
あっちゃんが先輩だから(笑)。
前田> 優子がそういうの一番平気で、
お仕事としてサラリとやる
かと思っていたけど、ピュアだった
ので、意外でした(笑)。
AKB48としての活動とドラマ
出演で多忙な日々を送った、彼女
たちならではといえる、次の
ようなエピソードも。それは、歌に
おいても演技でも抜群の瞬発力を
見せる大島優子の「プロ意識の筋肉」
が無意識にピクリと動くのか、
素顔の大島が持つ自然体のキャラクター
からくるものなのか・・・は、
わからないが。
大島> ドラマとAKB48の仕事が
交互に入っていると、切り替えが
難しいときがありますね。AKB48
ではカメラに向かって歌うこと
が多いんですけど、ドラマの収録
では、カメラ目線はしない。でも、
私、ドラマの撮影中もカメラの
赤いランプが付いたら、反射的に、
間違ってそのカメラのほうを
見ちゃうことがある(笑)。
前田> なるほどね。私は、しない
です(笑)。
大島> そっか。じゃあ、私だけ
なのかも・・・(笑)。
プライベートも仲がいい
前田と大島は、所属事務所が
同じということもあって、プライベート
でも仲がいい。この取材中も
ふたりは、写真撮影の合間に、
ずっと楽しそうに笑いながら雑談して、
まるで年齢の近い姉妹のように、
じゃれ合っていた。加入時期は
1期生の前田の方が先でAKB48
では先輩にあたるが、年齢では
大島の方が3歳年上・・・という
バランスが、仲の良さにつながって
いるのかもしれない。
大島> 「この映画を観てよかったよ」
とか、「どんな舞台を観に
いった?」という話は、二人で、よく
します。一緒に見に行くことも
多いです。
前田> ふたりが好きな作品は、
細かく言えば、ちょっと違うのかも
知れないですけど、おおざっぱには、
好みが合いますよ。
大島> 三谷幸喜監督の『ステキな
金縛り』を一緒に見に行きました。
しかも、ハロウィンの日に。
前田> 待ち合わせ場所で会う
までに、どれだけたくさんの仮装を
した人とすれ違ったことか!私たちは、
何も仮装してなくて、地味
なかっこうをしていました(笑)。
わたしは相変わらず、一人でも、
映画館やDVDで、映画をたくさん
観てます。一番最近にDVDで
観たのは園子温監督の『愛の
むきだし』です。すごく長い映画
なんですけど、夜中に見始めちゃた
ので、見終わったときにはもう
すぐ朝でした(笑)。主演の満島ひかり
さんがすごく好きで、お会い
した時も、「私もアイドル出身
なので、見ていて、気持ちがわかります。
がんばって」と声をかけて
いただいて、うれしかったです。
大島> わたしは、DVDで最近見たのは、
だいぶ前の映画ですけど、
ウォンビンさんが主演している
『母なる証明』。その前に『アジョン』
を観て、ウォンビンさんって演技
がうまい、と思ったので・・・、ふだん
は、基本、日本映画が好きです。
いつか二人で舞台に立ちたい
2012年も、AKB48として
の活動に加えて、前田は山下敦弘
監督の映画『苦役列車』に
ヒロイン役で出演するほか、大島も女優
としての活躍が期待される。
AKB48は、今後、今の人気がどこまで
続くかが注目を集めている。
だが、二人に12年の抱負と目標を
聞くと、そこには「人気の維持」と
いう発想はなく、貪欲に上を
目指している。
前田> 今年は、すべてのことに
おいて、実力をつけたいです。
大島> 歌番組に、ほかの
アーティストさんと一緒に出させていただくと、
私たちは、まだまだだなと
思います。AKB48は素人から
始めたグループなので、「どこが
足りない」というのではなくて、
歌もダンスなどのパフォーマンス、
見た目の”美”の部分など、全部
がまだまだなんです。でも、
それがそろって実力をつける時間を
持つのはなかなか難しい。今年は、
一人ひとりが個々に自分を磨き、
それをAKB48に反映させないと
いけないですね。
前田> 甘えちゃいけないな、って。
大島> AKB48としては、いろんな
ことをやらさせていただきました
が、ソロでも活動の幅が広がる
ようにしていきたいですね。よく
話しているんですが、いつの日か、
2012年ではなくて、もっと
先でいいから、あっちゃんと二人で
舞台をやりたいねって。
前田> どんな舞台がいいかな・・・。
舞台について、私は詳しくはない
んですけど、舞台を経験すると
芯が通る、って聞くので、少しずつ
経験を積んでから、いつか、一緒
に舞台をやってみたいです。
よきライバルであり、よき仲間
である2つの才能が、AKB48の
メンバーとして、女優としてどの
ような新しい表情を見せてくれる
のか、今年も注目したい。
備考:この内容は、2012年2月4日発行「日経エンタテイメント」
より紹介しました。