自覚と決意 木村沙織が羽ばたく時 | Q太郎のブログ

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パクリもあるけど、多岐にわたって、いい情報もあるので、ぜひ読んでね♥
さかのぼっても読んでみてね♥♥


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エースの自覚と決意を持って挑む3度目のワールドカップ

これまで以上の責任感を抱いているのは確かだ

苦しみの中から光を見出した時、真のエースへと成長を遂げる

いよいよ来年に迫ったオリンピックへ

今、木村沙織が、大きく飛躍する時


文/田中夕子 写真/平野敬久





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「チームを一つにして勝つためには軸が必要」もっと先に進むためには自分が

引っ張らなきゃいけないのかもしれない・・・

そう考えるようになった






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勝利のために、

自分が引っ張る。強い決意で

挑んだワールドカップ



三度目の五輪へ・・・。エースとしての


覚悟を胸に、木村沙織は広島のコート


に立った。そこに、トレードマーク


の笑顔はない。緊張感を漂わせ挑む、


11月4日、対イタリア。


「絶対に負けられない。とに


かく初戦がすべて、ともいうべき、


ほんとうに大事な試合」


 もっとも重要視してきた大一番。勝利の


ために自分が引っ張る。強すぎるほど


の責任感がイタリア戦では裏目に


出てしまった。




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「いつも国際大会は出足が悪いけれど、


今回は今まで以上に力が入りすぎ


ました」


組織的なディフェンスを敷くイタリア


に対し、ピンポイントを突こうとし


すぎた結果、思うような攻撃が展開で


きず1-3で敗れる苦しいスタートと


なった。スチールカメラやテレビカメラ、


多くの記者に囲まれた中で敗因を


淡々と語る。



「すごくもったいない試合をしてしま


いました」


 言葉数は少ない。だが、その静かさ


が、何よりも強く、胸中に抱く悔しさ


を表していた。





 愛くるしい笑顔と、立ち振る舞い。


下北沢成徳高校3年時に、自身初の


オリンピック出場を決めた際も「サオリ、


オリンピックに出られるんですか?」


と真顔で発するなど、「天然キャラ」


が先行しているせいか、木村沙織と


言えば明るく、天真爛漫なキャラクター


だと思われがちだ。


 だが、本当は違う。誰よりも


近くで彼女を見てきた母・朋子は、


娘・沙織をこう評する。



「自分の思っていることをそんなに


簡単に表に出すタイプじゃないんです


よ。小さい時からいつも人の陰に


隠れている、おとなしくて地味なタイプ


だったし。でもね、人に言わないだけ


で芯は強い。ワーっと出さない分、


沙織はものすごく負けず嫌いなんです。


だから、自分が納得するまで絶対に


妥協しないんですよ」



子供のころから、ずっとそうだっ


た。



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 小学2年生で母の友人に勧められて


 バレーを始め、1つ1つ、できる


ことが増える度に楽しみを見い出して


いたが、ある程度のレベルに達して


しまうと飽き足らなくなる。「もう少し、


出来ることがあるんじゃないか?」


と自分で考え、上がってきたトスを


ただまっすぐに打つだけでなく、ジャンプ


のタイミングをわざと遅らせたり、


手に当たる瞬間に手首のひねりを加え


てみたり、わざと打つ方向を見ずに逆


へ打ったり…。だれかに勧められたわけ


でもなく、自分でやりたいと思うことに


対しての探究心は、周囲の子供たち


とは比較にならないほど、コレをマス


ターする! と決めたときの練習に


対する集中力も群を抜いていた。


 中学、高校とキャリアを重ね、全日本


に選出されてからもその姿勢に


変わりはない。アテネ・オリンピックの


直前に「打って見ろ」と言われたジャンプ


フローターサーブも、竹下佳江


手本とし、何度も繰り返し練習した。


自分のものにするまで、納得するまでの


努力は決して惜しまない。天才少女は、


有言実行ではなく、不言実行で、その


スキルを磨いてきた。





オリンピックの決勝を見て

起きた小さな転機と

その後、訪れた大きな転機




 自身の中では、バレーを始めた小学


校の2年生のころから何も変わっては


ないのだが、彼女を囲む周りは違う。


「バレーボールはうまいけれど、


引っ込み思案で人見知りの沙織ちゃん」で


はなく、「天然キャラの天才女子高生


から「日本を代表するエースの木村沙織」。


作り上げられたイメージばかり


が先行した。「エースとして何を思う


か」と問われるたびに、内心で思うことは


1つ。


「私、エースじゃないのになぁ…」



 小さいころから「エース=バコバコ


決める点取り屋」と思ってきたせいか、


大技を持たない自分をエースだと


思ったことは一度もなかった。



そんな彼女に訪れた小さな転機と


なった時、それが、自身にとって二度目の


五輪だった。





 ブラジルに敗れ、アテネと同様に


5位で終わった北京オリンピック、試合


を終えた後も帰国せず、」チーム全員で


ブラジルとアメリカの決勝戦を観に


行った。まさに世界最高峰ともいうべき


プレーの応酬で、最も強く印象に


残ったのはサーブレシーブが崩れて


からでもつなぎ、最後にアタッカーへ


ボールをつなげ、託されたスパイカー


が着実に得点する姿。サーブレシーブ


の技術を磨くことはもちろん、自身に


とって大きな課題であることに変わり


はないのだが、そのあとにつなぐプレー


の重要性、そしてまさに「全員が


つないだ」ボールを決めきれる存在がいる


チームであることが、勝利するチーム


の条件なのではないか。ぼんやりと


ではあったが、それまでは考えたことの


ない発想が芽生えた。





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 小さな転機が、後に大きな転機へと


つながる。きっかけは、09年から


全日本を率いる眞鍋正義監督が面談の際に


発した一言だった。


「サオリ、このチームは勝つも負けるも


お前しだいやで」



 言われた直後は意味が理解できなかった。


今までならば、そのまま


「よくよくわからないから、まぁいいか」と


忘れていたかもしれない。だが、1日、


また1日と時間が経つにつれ、眞鍋の


言葉がズシンと心にしみた






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「チームを1つにして、勝つためには


軸が必要。そう思い初めていた時期


だったから、もっと先に進むためには


自分が引っ張らなきゃいけないかもしれない、


と考えるようになりました」


 全日本でも東レでも、周りを見渡せば


自分より年下の経験が浅い選手が


増えた。抜群の跳躍力や、思わず「どう


したら、そんなに拾えるの?」と聞かず


にいられないほど安定した守備力を持つ


選手と、共にプレーする経験を


得て、木村自身の中にも気づかぬうちに


変化が生まれた。



「下の子が入ったから自分が引っ張って


行こうと言うよりも、」自分が伝えられる


ものは全部伝えたい、伝えてあげたい


という感じかな。たとえばオリンピック


が終わった時とか、いつか自分


が振り返った時、そこに誰もいなかったら


日本のバレー界はダメだと思う


し、そうならないためにも、いま自分が


伝えること、伝えられることがいっぱい


あるんじゃないかなぁ、と思うように


なりました」






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三度目のオリンピックへ・・・。

苦しみを乗り越え、2012年、大きな飛躍を。





 静かに悔しさを噛みしめた開幕戦の


翌日、アルゼンチンとの2戦目は


3-0で快勝、今大会初勝利を飾った。


木村の対角には江畑幸子、ライトには


新鍋理沙、ミドルにはこの試合が初


スタメンとなった岩坂名奈、初めて


ワールドカップのコートに立つメンバーが


3人、名を連ねた。



 緊張した面持ちで1本目のスパイク


を決めた岩坂の背をポンとたたきながら、


木村が笑顔で声をかける。


「合宿中からずっと頑張ってきた姿を


見ていたし、若い選手が出ることは


チームにとってもプラスになる。まだ


固まってはいないけれど、この大会中


にチームとしては何か形が出来ればいい


なと思って。大したことは言えないで


すけど・・・」



 バレーの楽しさは何か?


そう尋ねられた


木村は2つの答えを返した。


 1つ目は今までできなかったプレー


が、イメージどおりにできるように


なった時。もう1つが、一生懸命努力



してきた選手が、試合に出てその結果


を出し、勝利することができた時。



 エースの自覚と決意を持って挑む


3度目のワールドカップ。これまで以上


の責任感を抱いているのは確かだ。


だがそれだけではなく、これまで以上に


得られるバレーの楽しさと喜びも感じて


いる。



 11月6日、広島での中国戦。開幕で


イタリアに敗れ、大一番となったこの


試合、セットカウント2-1とリード


しながらフルセットに突入し、最終


セットも5-1と大量リードを奪い


ながら逆転負けを喫した。


 イタリア戦以上の悔しさをにじませながらも、


試合後のミックスゾーンで


木村沙織はまっすぐに前を見て、


きっぱりと言った。



「3戦を終えて1勝2敗というのは、


正直、厳しいと思います。でも、


ここからどう戦うか? 今このメンバーで、


勝ちきれるか? このまま負けるかと


いうのは大きな違いがある。これから


どう戦うかがチームにとっても、個人的


にも、すごく大事になると思っています」



 納得するまでは、絶対に妥協しない。


苦しい時こそ真価が問われるので


あれば、きっと、これからがそのときだ。



 3度目の五輪へ向けて・・・。真の


エースとなるべく、木村沙織の挑戦は


まだ始まったばかりだ・・・。




備考:この内容は「月刊バレーボール 12月号」より紹介しました。