・・・セッターによってゲームが変わると
言われますが、改めてそういう
ポジションだとお考えですか?
眞鍋> う~んそうですね。やはり試合
を左右するポジションであるのは
間違いないでしょうね。僕が竹下に言う
のは、バレーボールはセットの
スポーツですから、そのセットを取るために
は、やはりスパイクを確実に決める
スパイカーに数多くトスを上げないと
勝てないと言うことです。
これから4年に一度の大きな大会で
あるワールドカップが始まりますけど、
そのワールドカップで世界の強豪
に勝っていくためには、セッターが
その日のラッキーガールをいち早く
探し求めて、その選手に数多くトスを
上げなくてはいけないと思っています。
では、それが誰なのかというのは、その
日にならないと分からない。それは
セッターである竹下が公式練習なのか
試合前なのか、そこで何かビビッとくる
物があるかもわからないですし…。
それはもう、たいへんやと思いますよ。
・・・竹下さんはそういうビビッとくる
感覚と言うのは?
竹下> 常にそういうところは言われて
いますので、意識しています。でも、
ほんとうに一日一日変わってくる
ので、そこを見極めるのは結構、難し
かったりします。
・・・試合に入ってみないと分からない?
眞鍋> う~ん、それは人によりますし、
その日のラッキーガールって、試合に
ならないと分からない者もある。
もしかしたら、誰もいない可能性だって
あるかもわからないですからね。
ただ、私はスターティングメンバー
がその日のベストメンバーであって
欲しいと思っているのですけども、
そうでない日は、早くその日のベスト
メンバーの6人をコートに入れるように
しようと、監督として心がけています。
・・・わからないなりに、どこかに
ヒントがあるのではありませんか?
眞鍋> これは、私が男子監督時代から
ずっと経験・体験してきたことから
いえば、やはりラッキー・ボーイとか
ラッキーガールとかは、大きな大会に
なればなるほど、一つだけ共通点が見える
んです。それは、日々の練習を一生懸命
やる人間とか、周りから非常に信頼
されている選手がそうなる可能性が
非常に高いなあと、そう思いますね。
・・・日々の練習と言えば、現役時代の
監督は常にボールに触っていて、寝る
時も枕元に置いていたと聞きましたが・・・?
眞鍋> いや、昔の話ですよ。
・・・竹下さんも、そういうことはありま
すか?
竹下> 若いころは、本当にボール
ばっかり触っていました。特に自分で
ポイントがつかめていない時とか
など、全体練習以外の時間にもボールを
たくさん触っていたり、そういうのは
ありました。
・・・味方チームのみんなから信頼される
一方、相手チームには嫌われるような
選手・・・かつての月刊バレーボール
で行ったアンケートで眞鍋監督が1位
だったことがあります。
眞鍋> 現役の時は、相手のブロックが
どこに決まるかということに非常に
敏感でしたね。だから、ほんとうに
いろんなビデオを見て、相手に特に
ミドルブロッカーのクセをよく見ていましたねぇ。
だから、まぁ、(相手チーム
からは)嫌がられているのかなぁと
思っていました。
反対にいえば、僕は試合前にそこ
までやらないと試合に入るのが怖かった
んですよ。だから、やはり準備だけは
しっかりしました。ま、今でも、紙の上
では何千連勝していますよ(笑)。
現実はそんなふうにうまくいきません
けどね。
・・・竹下さんは試合に入る前の準備
で、自分なりの方法とかありますか?
竹下> ほんとうに眞鍋さんって、そう
いうデータを紙に落としてやっている
感じとか、すごいなと感じているので
すが、たぶん私はそこまでいけてない
と・・・。でも、自分の中で自分が持って
おきたい情報とか、自分の中で頭の整理
をするという意味での映像の見方とか、
そういうのは準備としてやって
います。はい。
・・・唐突ですが、お互いにキャッチ
フレーズをつけるとすると…?
眞鍋> う~ん言葉ねぇ。世界一の美女
セッター。
竹下> はっはは。なんか、もっと
おもしろいのないですか?
眞鍋> おもしろくないかな?(笑)
竹下> うふふふ。
眞鍋> でも、竹下がすごいのはね、
本人を横にして言いますけど(笑)
竹下は身長が低いというハンディキャップ
があるんですよ、間違いなく。
当然、前に行けばブロックは低いでしょ。
でも後ろに回れば、要するにリベロが
2人いるようなものですよ。それだけ
レシーブを拾うんです。そういった
意味では、日本にとっては非常にプラス
ですよ。さらに言えば、我々は相手の
データを見て、このセッターはどこか
らトスを上げるんだということ
をいろいろ研究し分析しているのです
けど、竹下が前衛の時には、ほぼここ
からボールが来るというのがわかって
いるため、非常に守りやすい。これは
もう、プラス思考ですよね。そういった
意味では、そこを反対に利用すれば
いいじゃないですかといっておきます
けどね・・・。
・・・お返しで監督のキャッチフレーズ
を・・・?
竹下> ・・・・・。
眞鍋> 嵐のような監督でもいいよ。
嵐って・・・あ、ま、いいや。
竹下> ははははは。え~、なんですか?
男前監督ですか?
眞鍋> そんなん、やめようや。はははは。
竹下> なんですか?
眞鍋> プラス思考でいいやん。
竹下> はい。
眞鍋> それでOK。はははは。
竹下> ほんと、そうですよね。
眞鍋> ほんとそうですよねって、
だって、1回しかない人生やで。その1回
しかない人生、楽しくいかないで
どうするの?
竹下> 素敵ですねえ。
眞鍋> 素敵よ。
竹下> ははははは。
・・・竹下さんにとっては、勝負の世界
にいることは楽しいことですよね?
竹下> あまり・・・。
・・・でも、バレーボールが好きだと
いうことはあるじゃないですか?
竹下> たぶんバレーボールから離れた
らよけいにそこにいたことを、よかった
んだなと思うのでしょうけど・・・。今は
ずっとその世界にいて、もうずーっと
神経とがらせてやっているから、正直、
苦しいんですよ。ただ、苦しいけど、
やっぱり勝った時の喜びとか、みんな
で1本決めたときの楽しさというのは、
もう、そこにいないと味わえないこと
なので・・・。それはほんとにしびれますけど・・・。
お家芸のディフェンスで
オリンピック出場権の獲得を!
・・・さて、ワールドカップへ向けて、
ここまでのチーム状況を教えて
下さい!
眞鍋> アジア選手権が終わってワールド
カップまで最終調整という段階
なのですが、今のチーム状況として、それ
ほど調子がいいと言う訳ではありません。
その要因としては、アジア選手権で
のケガ(右ひざ十字靭帯損傷、
右ひざ内側側副靭帯損傷)による山本愛、
さらに右肩手術の回復具合によって井上香織
もワールドカップには出場できません。
そういった意味で、去年のチーム
から考えると、チームで一番ブロック
のいい選手、チームで一番スパイクの
決められる選手の2人がいないという
のは、ほんとうに日本にとっては非常に
厳しい状況です。しかし、代わりに
ベテランの森和代も入ってきました
し、この14~15名のメンバーとスタッフ
が一丸となって、目標である世界一
に向けてワールドカップでは挑戦する
ことになります。少なくとも3位以内
に入ってオリンピックの出場権を取る
という目標達成を必ずクリアしたいと
思っています。それが今の最大の目標
ですね。そのためには、最終的には
やはりディフェンスがポイントになり
ます。ディフェンス力を上げないと絶対
に勝てない。反対に言えば、ディフェンス
ができない選手はコートに
入れないというくらいの所までいかないと、
ワールドカップでは勝てない
だろうと思いますね。
・・・山本選手のケガは、竹下選手に
とっても・・・?
竹下> ほんとうにケガということに
関してはすごくショックで、個人的にも、
そうでしたけど、チームにとっても
すごく痛いところだと思っています。
でも、すぐ目の前には大会がありますので、
今はどうやって自分たちが勝って
いくかということが大きな課題なの
で。そういう意味では、ほんとうに
チーム力が試される時だと思いますので、
チーム一丸となって頑張らなければ
いけないなと思っています。
・・・チーム力が問われると?
眞鍋> 全体的に言えば、やはり去年の
チームの方が今よりいいですが、
反対に、これからはV字回復で、右肩上がり
にポーンと行くということは大いに
ありますからね。この1か月間が我々
にとっても勝負かなと思います。
でも、我々の最終的な目標はオリンピック
ですから、今回、山本と井上の
2人が出られないということは非常に
厳しいですけれども、ロンドンで勝つ
ために神様が大きな試練を与えたんだ
なと考えるようにしています。仮に
ワールドカップで2人がケガをした
ら、OQT(オリンピック最終予選)
も、本番のオリンピックにも出られません
から。そういった意味では、反対
にその前でよかったなぁというふうに
思っています。
・・・そんな中で、成長してきた選手
は?
眞鍋> 一つだけ言えることは、サイド
は去年よりはるかにいいです。今回、
栗原恵も合流して、最終的に誰がメンバー
に入るのか、今の段階でわからない
ですが、去年から見れば、サイドは
狩野舞子、新鍋理沙の2人が入り
ましたから・・・。誰がレギュラーポジションを
取るか?また、その前に誰が14人の
エントリーに残るのかなぁというのは、
楽しみでもあります。
・・・ワールドカップになれば、これま
でとスイッチの入り方も違うのでは?
眞鍋> いやあ、それは違うと思いますよ。
まちがいなく・・・。
・・・竹下選手もそうですか?
竹下> やはりオリンピックの出場権が
掛かっていますので、そういう意味で、
ちょっと違うと思います。
・・・それでは、バレーボールファンへ
のメッセージをお願いします。
眞鍋> まず、今年は3月11日に東日本
大震災があって、我々の練習着にも
ユニフォームにも、「こころはひとつ」と
いう文字がありますように、ほんとう
に厳しい試合になるのはもう、わかって
いますけど、一戦一戦を死に物狂いで
被災者の皆さんと一緒にベストを
尽くしていきたいと思います。
・・・ここを見てほしいという点は
ありますか?
竹下> そうですね。やはりこの1年を
通して、ディグ(強打レシーブ)は
すごく言われてきているところですし、
みんなの意識も変わってきていると
思いますので、そういうディグ、つなぎ
の部分というのは、いいところを見て
頂けるのではと思います。そう自分
たちに期待しながらも、さらに頑張り
たいと思います。
・・・監督はいかがですか?
眞鍋> 日本の得意なディフェンスと
いう部分は、我々の一番お家芸の所
ですから、やはりディフェンスで拾って、
つないで、点数を取るという部分。
同じ1点ですけども、バレーボールは
リズムのスポーツですから、その1点
が2点にも3点にもなるわけですから、
ディフェンスでの1点は、かなり
大きいと思っています。ぜひ応援を
お願いします。
おわり
備考:この内容は、「月刊バレーボール 11月号」 より紹介しました。