「悔し泣き」 栗原恵
私が保育園に通っているころから、家にはバレーボールがあった。毎日、父が
仕事から帰ってくると、兄と私はよくパスのまねごとみたいなことをして、家の庭
で遊んでいた。兄はソフトボールを始めてからは、父とよくキャッチボールを
していたけれど、その傍らで、私は大きなバレーボールを持って遊んでいた。
いまから思うと、父も結構ムキになっていたみたい。よくケンカになるの
だ。まだ、小学校にも入らないような子供の私に、一生懸命アンダーパスや
オーバーパスをやらせようとしていた。うまくできないと、父がじれて、
「ああ、もう、そうじゃない!」
と。私もやりだしたことができないと、思わず悔しくて怒って、それで、
「できない!もう、やらない!!」
と、怒っていた。母が、
「なら、もうやめたらいいのに」
と、そのつど苦笑いをするのだけれど、また、次の日になると、ケロッと忘れて
同じように庭で父とパス練習をする。
その繰り返しだった。
もともと、出来ないことに地団駄を踏むような子供だった。3歳ぐらい
から、冬になると鳥取県にある大山国際スキー場に家族で遊びに出かけていた
けれど、父と兄がさっそうとスキーをする姿を見て、同じようにできないと、
悔し泣きしてしまう。幼いころに泣いた記憶で、その理由を覚えているのは、
たいてい悔し泣きだ。
備考:この内容は実業之日本社 栗原恵著 めぐみ(¥1200+税) より紹介しました。
私の夢は、終わった時に
「楽しかったな」と言える
バレーボール人生にすること。
今がツラくても、最後に
笑えるようにって思っています。
栗原恵