私たち夫婦は、結婚して34年になります。そして今、夫は仕事を

リタイヤして3年、全くの自由人として暮らしています。私は、将来の
引退を心のどこかに持ちながらも、未だに現役バリバリ。毎日の生活

スタイルや人生観にややずれが生じてまいりました。夫64歳、妻56歳。
”熟年離婚”という言葉をよく耳にする昨今、私たちにとっても他人事

ではありません。離婚することそれ自体が決して最悪のこととは
思いません。いやいや一緒にいるくらいなら、きっぱりとそれぞれ

新しい人生を歩んでいく方がお互いの幸せなのかもしれません。
でも34年の人生にはそれなりの重いものがあり、愛情もちょっぴり

残っております。また、神様の前で永遠の愛を誓ったその日から「添い遂げる」
ということが人生の大きな目標であったことも事実です。できれば

添い遂げたい。できれば同じ墓に入りたい。でも、腹が立つ・・・。
私たち夫婦はよくケンカをします。激しく言い争い、私は泣き、

わめきます。おしゃべりのプロである私に対し、素人の夫が5分の戦い
を挑むのですからいい度胸だと感心することもあります。しかし、

お互い決して逃げません。そして、徹底的に話し合います。そんな
時、私の知らなかった夫の言い分に「へぇー」と思うことがあります。

夫も初めて知った妻の言い分に「そうだったのかぁ」と感じている
様な気がします。30数年も共に過ごしてきた夫婦でも、相手の

気持ちや本音を驚くほど理解していないのです。
この本は私たち夫婦の「夫婦げんかの歴史」です。愚痴っぽい妻と、

理屈っぽい夫の人生バトル。皆様のご家庭でもよくある話が多い
かと思いますが、私たちはこうして危機を脱出してきたのです。すべての

ご夫婦に、またこれからご夫婦になられる方々に、特に熟年期を
迎えられたご夫婦に読んでいただき、何かの参考になれたら幸いです。

上沼恵美子
この内容は、Gakken 上沼恵美子著 犬も食わない(\933+税) より紹介しました。
はじめに
昔々も歌謡曲に(愛の化石」と言う歌があります。麻丘ルリ子
さんが歌ってヒットした曲ですが、その中に語りで「愛するって
耐えることなのね・・・」というフレーズがあります。そう、愛とは耐える
ことなのです。
結婚して34年、ただただ忍耐の日々でした。このご褒美が熟年
離婚ならたまったものではありません。…男はおおむねこう考えて
いるでしょう。どうやらこれが間違っているようです。女も
耐えていたのです。
あまた多くの地球人類の中から選ばれた一人の男と一人の女が
赤い糸で結ばれたその日から、その赤い糸は強度を失い始め、切断の
危険にさらされます。その最大の原因は、お互いへの理解の欠如
なのです。他人として生まれ、他人として育った二人が、夫婦と言う
親密な関係を持ったからと言ってすべてを理解しているわけでは
ありません。ましてや、心の中を〇〇するなどとても難しいことで、
いつの間にか自己中になっているようです。私は、数限りなく繰り返して
きた壮絶で悲惨な私たちの夫婦喧嘩を通してその事実を学び
ました。
もはや風前の灯の私たちの赤い糸も強度を保つため、私は妻の
言い分を聞き、気持ちを理解し、再び耐え続けることを誓います。
上沼真平