interview with JAMES CAMERON
子供のころ、ありとあらゆるSF小説を読み漁っていた。「アバター」は、その集約なんだ。
ジェームス・キャメロン(製作・脚本・監督・編集) インタビュー
・・・「アバター」の、構想はいつごろから持っていらっしゃったのでしょうか?
JC:脚本を書き始めたのは、、1995年、だが、惑星やクリーチャーを考え始めたのは、
僕が10代のころだ。僕はSFの大ファンで、子供のころは、ありとあらゆる
SF小説を読み漁っていた。この映画は、その集約なんだ。ぼくは、まったく
新しい世界を舞台にしたSFを書きたかった。見たことのない
クリーチャー、 見たことのない光景。それは、巨大なチャレンジも意味した。何もかも、一から創作しなくてはい
けないのだから。
・・・そこで、出てくるのがアバターやナヴィなど新しい生き物。パンドラと言う衛星では空に浮かぶ山なども出てきます。そのような生き物や情景はどのように思いついて、どのように映像化したのでしょうか?
JC:この企画を本格的にスタートさせた時、僕は自分が前から尊敬して
いて、いつか仕事をしてみたいと思っていたアーティストたちを集めた。
クリーチャーをデザインする人、テクノロジーに詳しい人、すべての面で
だ。僕の中にアイディアはすでにあったので、アーティストにそれを口頭で
伝えて描いてもらうこともあったし、自分でデッサンをしてみたことも
あった。ナヴィに関して言うと、最初はもっとエイリアンっぽいルックスだったんだ。
だが、これはラブストーリーなので、試行錯誤をするうちに、
どんどん人間っぽいルックスに変わっていった。尻尾も違うものになったよ。
彼らの一番の特徴は、体の大きさだ。あの大きさが、彼らが
人間ではないことを常に思い出させる。
・・・ナヴィやアバターがあのように大きいことは、困難の要素に
なりましたか?
JC:いや、それはあまりなかった。なぜなら、ナヴィと人間が一緒にいる
シーンはあまりないからだ。ナヴィが出てくるときは、たいていアバターと
並んでいる。だから人間ばかりのシーンを撮影するのと変わらない。
15年前、初めてアバターを考えたとき、僕は実際に森林でロケをして、
そこにアバターを連れてこようと思っていた。だが、そのうちCGで背景も
作った方がいいという結論に至った。そのことは、困難の要素をさらに
プラスすることになったのだが。
・・・テクノロジーが追いついたおかげで、実現したという訳でしょうか?
JC:そのとおりだ。90年前半に、僕とスタン・ウィンストンは、デジタル
・ドメインと言う会社を立ち上げた。彼はちょうど「ジュラシック・パーク」を手掛け、
僕は「ターミネーター2」を完成させたところで、僕ら二人は、
不可能なことなど何もないと感じていたんだ。それで「こういうクール
なものばかりやる会社を作ろう」と、クリーチャーやキャラクター作り
を専門にする会社を設立したのだが、結果的にはあの会社は「トゥルーライズ」
とか「アポロ13」とか、そういう映画ばかり携わることになる。
そこで僕は「自分がクリーチャーやユニークなキャラクターがたっぷり出て
来る映画の脚本を書いてやろう」と決めた。それが「アバター」だ。だが、
社内のスタッフにも「これはまだ無理ですよ」と言われ、僕は「アバター」を
棚上げにし、「タイタニック」を作った。しかし4年ほど前、ふと「アバター」の
脚本を取り出してもう一度読んでみると、自分でも「これはいい話だ」
と改めて思ったんだ。その時までに、僕はピーター・ジャクソンの「ロード・オブ・
ザ・リング」で、彼がコラムのキャラクターなど革命的なことをやったのを
見ていた。彼にできるなら、僕にも「アバター」が作れるはず。今こそ
やろうと決めたが、それでも、テクノロジーがまだ十分ではなかった。僕ら
は、製作の合間にもあらゆるテクノロジーを開発することになる。この映画
の製作の最初の1年半は、テクノロジー開発に費やされているんだ。
・・・主演に、サム・ワーシントンを選んだ理由を教えてください。彼は
「ターミネーター4」に出演して、今ではいくらか名前が知られていますが、
あなたがキャスティングをしたのは、「ターミネーター4」よりずっと
前だったはずです。
JC:そう、彼は全くの無名だった。だが、僕はそれが問題になるとは
思わなかったよ。スタジオは「観客が知っている俳優にするべきだ。そう
すれば、観客は彼がアバターに変化した後も、それが彼であることがわかる
から」と言った。でも、これはジェイクの物語で、ジェイクは最初から最後まで
出てくる。だから観客は映画を見るうちに、彼を知るようになる。無名
俳優を避ける理由は、何もない。そしてサムは、あの役に最高の俳優だった。
彼を知ったのはオーディションテープが最初だ。彼にはどこかまだ
磨かれていない部分があったが、すごいパワーを感じた。問題はオーストラリア
訛り。彼に実際に会って、今までにアクセントコーチからレッスンを
受けたことがあるか聞いたら、一度もないという返事だった。彼は当時、
車に寝泊まりしていたような状態だったんだよ(笑)。アクセントコーチ
何ていうものとは別世界にいたんだ。彼は性格もよく、僕らは
気が合ったので、先にキャスティングしていたゾーイと並ばせてシーンを演じさ
せてみたら、非常によかった。後はスタジオを説き伏せるだけだった。
・・・シガニー・ウィバーとまた組まれましたが、グレースの役にほかの
女優も検討しましたか?
JC:ぼくとシガニーは過去に、一緒に大型SF映画を作っているので、また
かと思われるかなとは考えた。それでほかの女優も多数、候補に挙げたが、
最後には「いいじゃないか。僕らは気が合うんだし、彼女がこの役に
合っている」 と、彼女に決めたんだ。
・・・この映画は最初から3Dでしか撮らないつもりだったのですか?
JC:そうだ。またスタン・ウィンストンの名前を出すことになるが、僕が
「ジェームズ・キャメロンのタイタニックの秘密」を3D
で作った時、やはり
3D好きのスタンに見せた。僕が「長編映画でもこの技術を使いたいんだが、
失敗すると怖いし、まずは小作品で試そうと思っている」と言うと、
彼は「いや、だめだ。3Dで長編を撮るなら、キミにとっての「スター・ウォーズ」
みたいな、最大かつ最高の映画でやれ」と反対されたよ。僕は彼の意見を
受け入れて、僕にとっての最大かつ最高の映画を3Dで撮ったわけだ。
とはいえ、3Dというのは、勝手には始まらない。まずは観客が「3Dで見たい」
と思わせる作品をフィルムメーカーが作らなければ。それがあって、
初めて劇場主は3Dスクリーンを設置しようと思ってくれる。だが僕は、
3Dスクリーンが増えるまで待つことはできなかった。こっちから進めないと、
と思った。製作するうちに、3Dシアターが増えることを望むしか
無かったんだ。
・・・あなたが今後作る映画は、全部3Dになるのでしょうか?
JC:僕はもう3D以外の映画を作ることに興味はない。これは3Dにする
といいぞ、と思うからその映画を3Dで作るわけじゃないんだ。「これは
カラーにするといいぞ」と思うから、いまみんながカラーで映画を撮っている
訳じゃないのと同じ。照明、衣装、メイク、と同じで、3Dも、その作品
を最高の形で見せるための手段。そうした方がその映画がいい映画に
なるからやるんだよ。
取材・構成・猿渡由紀(映画ライター)
備考:この記事は、映画パンフレットから、お借りしました。