【大ボケじいさん、
兵役時代にタイムスリップ...】
Yさんは、77歳になる男性。
飲めば軍歌が飛び出す世代だ。
その彼が、はじめての海外旅行、
「熟年ヨーロッパツアー」に参加した。
ロンドンに着くと、もうソワソワ。
見るもの、聞くものすべてが初体験で、落ち着かない
様子なのだ。
もちろん、英語もできず、
ホテルでは、荷物を抱えてロビーをオロオロ。
なにをするのも、ビクビクの し通しなのだ。
さて、翌日、バッキンガム宮殿を
見物に行ったときの事。正面に立つ衛兵を
見たとたん、Yさんは、何を思ったのか、
「鈴木大尉どの、Y一等兵、
ただいま帰って参りました!」
と叫び、最敬礼してしまったのだ!
周囲にいた観光客は、びっくりして
思わず飛び退いた。あの黒い帽子に赤い制服の
衛兵も、突然のことでいっしょになって、
敬礼を返してしまったとか...。
「初めてのツアーで、
つい緊張してしまって...」
と、頭をかくYさん。衛兵を見て、
思わず自分の兵隊時代にタイムトリップ
してしまったようだ...。
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【あぁ情けない! お辞儀のしすぎで笑い者...】
戦後の日本で、どんどん強くなった女性に比べ、
弱くなったのが男性である。
中でも、おじいさんたちは、コワモテの
古女房には邪険にされ、強い嫁には無視されて
と、じつにお気の毒な毎日。そんな
おじいさんたちが、なにを思い立ったのか、
ヨーロッパツアーを組んだ。
格式にうるさく慇懃無礼(いんぎんぶれい)な対応が
当たり前のフランスのレストランにやってきた
ご一行は、ドアボーイだろうと、ウエイトレス
だろうと、ウエイターだろうと、
なにかされるたびに、「あぁ、どうも」と、
ペコペコお辞儀のしっぱなしだ。
レストランのドアを開けてもらって、「あぁ、どうも」
メニューをもらって、「あぁ、どうも」。
これじゃ、どっちがお客か、わからない。
その様子を、観ていた小学生くらいの
フランス人の女の子が、
母親に不思議そうに、
聞いていた。
「あの小さいおじいさんたちは、
こんなりっぱなレストランにきたのに、あんなに
ペコペコしてるなんてヘン。
もしかしたら下層階級の人たちなの?」
隣りのテーブルで、それを、
聞いていた日本人商社マンの家族連れは、
にがにがしい顔で、そそくさと食事を済ませ、
おじいさんたちの団体をにらみつけるようにして
帰って行ったのだった...。
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【ツアコンもタジタジとなった
マナー知らずの親子旅行...】
ベテランのツアーコンダクターMさんが、
小さな子どもたちを連れて行く家族
パックの ヨーロッパツアーに添乗した
ときの話である。
アムステルダムのレストランでの夕食時、
ビュッフェ形式だったので、Mさんは
こうした場合のマナーどおり、まず
お客さんたちに一度、席についてもらった。
ワインやジュースなどの飲み物のオーダーが
ひととおり終わったところで、
「おまちどう様、さぁどうぞ。
ご自由に料理を取りに行ってください!」
ところが、5、6人の子どもがいっせいに
駆け出して、我先に料理を取り出した
のである。キャッキャッと騒ぎながら、
あちこちのお皿から取り集め、お皿を
てんこ盛りにして大喜びである。
Mさんが、内心ハラハラしていると、
案の定、レストランにいたオランダ人のご婦人が、
きびしい口調で言った。
「あなたがたの国では、どうか知りませんが、
こちらでは、どんなときでも、まず料理は
大人が先に取ります。子どもは最後です」
Mさんは、そのご婦人の言葉を通訳して、
子どもたちの母親に伝えた。
西洋のマナーを学んでもらう よい機会だと、
思ったのである。
しかし、母親たちは、Mさんをにらみつけて、
「別にいいでしょ。よけいなお世話よ!」
Mさん、外国人客の冷たい視線に
身を小さくしながら、心の中でつぶやいた。
「まったく子が子なら、
親もおやおやだ...」
備考:この内容は、
1994-1-5
発行:河出書房新社
著者:ユーモア人間倶楽部
「旅の大ドジ編・
世にも恥ずかしい人々Ⅱ」
より紹介しました。
うっ...もえあず?