私は、子供のころ人形が好きでした。

たくさん人形を買ってもらって、人形劇をやっていました。

その中でも、特にカエルの人形がお気に入りで、どこに行くにも一緒でした。

 

しかし、そのどこでも一緒、というのが悲劇の始まりなんですね。

 

外に人形を持ち出すというのは、当然ですが、

なくなる可能性も高くなるということです。どこかに置いてきてしまうんです。

 

そうして私も例にもれず、お気に入りのカエルの人形を

どこかに落としてしまったのです。

 

昔のことで、少し記憶があいまいなのですが、

友達からもらったのか、親の知り合いからもらったのか、

いずれにしても、どこに売っているのかもわからず、

代わりを買うということもできなかったと記憶しています。

 

それはそれは、たくさん泣いたものです。

そのことは、長い年月が経った今でも確かな記憶として残っています。

初めての喪失、とても寂しい思いをしたのだと思います。

 

時は流れて、そんな私も大人になり、一児の父となりました。

息子はアンパンマンの人形がお気に入りです。

 

最近はより一層愛着が沸いたのか、どこにいくにも、

アンパンマンを連れていきたがります。

息子はアンパンマンを『パー』と呼び、

パーと寝るといって、寝る時も一緒です。

 

私は、一抹の不安を抱かずにはいられません。

これが悲劇の始まりとならないことを、祈るばかりです。

ただ、愛着を持って人形と接することは、とてもいいことです。

喪失感を学ぶのも、成長にとって悪いことではないでしょう。

 

でも、やっぱり、そんなことが起きないのが一番です。

この一抹の不安が、杞憂に終わるといいなと、思ったという話でした。