女優 吉高由里子


松永由岐2009峰岸美丘2010岸谷美砂2013村岡花子2014鎌田倫子2017竹村凛々子2018東山結衣2019真壁ケイト2020矢神楓2020真田梨央2021伊藤野枝2022雪宮鈴2023
そして
紫式部2024
2003年10月、文芸誌すばる11月号にすばる文学賞受賞作として「蛇にピアス」という魅力的なタイトルの小説が掲載された。小学校4年生以降学校には殆んど通わずリストカットを繰り返していたという金原ひとみ1980-の鮮烈なデヴューだった。この小説は翌年、綿矢りさの「蹴りたい背中」と共に第130回芥川龍之介賞を受賞、同学年の二人は最年少受賞者として大きな話題を集めた。

19歳のルイは、あるときクラブで顔中にピアスをつけた赤いモヒカンの男アマと出会う。アマの舌は先端が2つに裂けていて、そのスプリットタンに惹かれたルイはアマと暮らすようになる。自分の舌をスプリットタンにしようとルイはシバが営む身体改造の店を訪れシバの指導でまず舌にピアスを入れる。シバの刺青に魅了されたルイは麒麟と龍の刺青を入れる決意をし、シバとも仲を深めてゆく。そんなとき、以前アマが起こした暴力事件が警察によって捜査され始め、ルイの周りには不穏な空気が漂い始める。

題材もテーマも人物像も忽ち世の耳目を集めるほど極めて斬新で衝撃的だったけれど、実は最も驚嘆したのはその文章その文体その語彙その修辞の目覚ましさと紡がれる物語の純度だった。最初から金原ひとみにとって文章は武器そのものだった。蜷川幸雄1935 - 2016に見せたら敏感に反応し、読み進むほどに関心を深くしたようだった。暫くして、出版社サイドから作家が蜷川幸雄の監督による映画化を熱望していることが伝えられた。蜷川はオファーを快諾、ヒロインオーディションが企画された。抜擢されたのはデヴューしたばかりの19歳、吉高由里子1988-、撮入直前に交通事故で顎骨を折るほどの重傷を負ったのだけれと、蜷川は全快を待つ。すでに吉高由里子は蜷川幸雄のミューズだった。共演は、アマに高良健吾、シバにARATA(現井浦新)、小栗旬と藤原竜也も特別出演している。吉高はアマともシバとも全裸で絡む激しい性愛ショットも含めて、全編、清冽にして壮絶なシークエンスを鮮やかに演じ切った。金原ひとみの小説世界を忠実に映像化した蜷川会心の美しくも痛切な映画になった。
蜷川の映像的な舞台構築には、並々ならぬ映画体験、見識、素養、センスが凝縮されているけれど、映画でなければと映画に取り組んだのは
1980年
日本各地から集まった108人の実習生が帆船・日本丸に乗り込み初めて体験する遠洋航海の全てを記録したドキュメンタリータッチの劇映画。中島みゆきの最高傑作「世情」が流れるなか新宿の空に帆船が浮かぶラストが忘れ難い、
「海よ、お前が - 帆船日本丸の青春」
1981年
夏目雅子・萩原健一・石橋蓮司・関根恵子(現高橋恵子)との
「魔性の夏」
2003年
二宮和也・松浦亜弥・秋吉久美子との
「青の炎」
2004年
唐沢寿明・香川照之との
「嗤う伊右衛門」
に続いて、
この2008年「蛇にピアス」が5作目。最後の劇映画作品になった。ほんとはもっともっと撮りたい映画があっただろうし、構想が何本もあったに違いないが、生涯の演出舞台が新作だけで少なくとも120本、再演や新演出を含めると優に200本を超えるというスケジュールの中では、よくぞこの5本を残してくれたと思う。

原作の金原ひとみは「蛇にピアス」のあと、精力的に新作を発表、一作ごとに世界が開かれ拓かれ劈かれてゆくスリリングな弛みのない興趣を齎し続けてくれる稀有な小説家になった。
『アッシュベイビー』
『AMEBIC アミービック』
『オートフィクション』
『ハイドラ』
『星へ落ちる』
『憂鬱たち』
『TRIP TRAP トリップ・トラップ』 
『マザーズ』 
『マリアージュ・マリアージュ』
『持たざる者』
『軽薄』
『クラウドガール』
『アタラクシア』
『パリの砂漠、東京の蜃気楼』
『fishy』
『アンソーシャル ディスタンス』
『ミーツ・ザ・ワールド』
『デクリネゾン』

そして吉高由里子。
「蛇にピアス」に続いて、映画へのオファーが殺到、
「重力ピエロ」2009 
「カイジ 人生逆転ゲーム」2009
「すべては海になる」2010
「GANTZ」2011
「婚前特急」2011 池下チエ 
「GANTZ PERFECT ANSWER」2011 
「探偵はBARにいる」2011
「カイジ2 人生奪回ゲーム」2011
「ロボジー」2012 - 佐々木葉子 
「ヒミズ」2012
「僕等がいた」 2012- 高橋七美 
「横道世之介」2013与謝野祥子
「真夏の方程式」2013- 岸谷美砂 
「ユリゴコロ」2017 美紗子
「検察側の罪人」2018 橘沙穂 
「きみの瞳が問いかけている」2020柏木明香里
と主演・準主演が続き、
テレビでも、「蛇にピアス」の前には、WOWOWの
「紺野さんと遊ぼう」くらいしか主演作がなかったのだけれど、2009年、小栗旬・水嶋ヒロの相手役松永由岐に起用された「東京DOGS」を皮切りに
「美丘-君がいた日々」峰岸美丘
「ガリレオ」岸谷美砂 
「花子とアン」 村岡花子 
「東京タラレバ娘」  鎌田倫子 
「正義のセ」 - 竹村凜々子 
「わたし、定時で帰ります。」 東山結衣 
「知らなくていいコト」 真壁ケイト
「危険なビーナス」矢神楓 
「最愛」真田梨央
「風よ あらしよ」伊藤野枝
「星降る夜に」 雪宮鈴
と、殆んど途切れなく主演ドラマが続いていて、2024年には、
「知らなくていいコト」「星降る夜に」で組んだ脚本家大石静とのNHK大河ドラマ
「光る君へ」の紫式部が待っている。

瞬く間に吉高由里子は、当代最重要の女優のひとりになった。
因みに、出生年が吉高の前後8年にはこんな面々がいる。

1984
松本まりか・松本若菜・綾瀬はるか
1985
満島ひかり・宮崎あおい・蒼井優
1986
沢尻エリカ・北川景子・安藤さくら
1987
長澤まさみ・倉科カナ・桜井ユキ
1988
吉高由里子・戸田恵梨香・新垣結衣
1989
仲里依紗 多部未華子・田中道子
1990
大西礼芳・黒木華・趣里
1991
高畑充希・前田敦子・三浦透子

今日7月22日は、
吉高由里子35回目の誕生日