男同士の性愛は、貴族社会において

特異な行為ではなかったらしい。

「源氏物語」の小君と源氏にも、

その関係があったのではと想像できるところがある。

また僧侶が美少年をかわいがっていた例も多い。

この頃の貴族で特に注目されるのは、藤原頼長だ。

博学多才の勉強家で、

「悪左府」と呼ばれたほどのやり手だったが、

彼の日記「台記」には男色記事が豊富だ。

その相手は貴族から下級役人にまでおよんでいて、

男色の関係を政治的に利用しただけでは

ないことが窺える。

 

 

 

 

お経に残された春画の謎

岩手県平泉の中尊寺に伝わるお経に、

2739巻からなる「紺紙金字一切経」がある。

これは初代藤原清衡を筆頭とする、

奥州藤原氏三代によって納められたものだが、

不思議なことに、

その1巻には春画めいたものが描かれている。

ひとつは男女が仲良く語らうというより、

睦まじくじゃれ合った図。

もうひとつは先のじゃれ合う男女が次にどうなるかを

予感させる男女同衾の図で、

女が上になり、汗を飛ばしながら交わっているかのように見える。

現代の感覚ならさしずめ、

「罰当たりなことを」となりそうだ。

しかし性愛に関する生々しい記述が、

「源氏物語」代表される物語文学ではなく、

「日本霊異記」や「今昔物語集」など、

仏教思想の影響を受けた説話文学に

多く残されていることを思うと、

これもこの世の儚さを示すものでもあろうかと

想像することができる。

ただこの絵をよくよく見てみると、

そう考えるには、あまりに微笑ましく、

のどかでありすぎるようでもある。

当時の人々にとって、

この絵が欲情を誘うのに必要十分なものだったのか、

それとも実は笑いを誘うための

画工達のちょっとしたいたずらだったのか、

今となっては知りようがない。