JR代々木駅の東側にそびえるNTTドコモ代々木ビル、通称「ドコモタワー」。東京都のビルの中では六本木のミッドタウンタワー、西新宿の東京都庁第一本庁舎に次いで3番目の高さを誇る。
新宿のランドマークとして定着したこのビルは、2000年の竣工以来、一般の商業ビルではなく、ドコモの自社専用ビル。関係者以外は立ち入りできない。
このビルの地上240メートルの頂上付近に、見渡す限りの広範囲をカバーする「大ゾーン基地局」がある。この設備は、通常の設備と異なり、緊急用。まだ一度も稼働した実績がない。つまり、普段はまったく使われていないのだ。しかし、明日稼働するかもしれない。震災などの緊急時に稼働し、警察の110番や消防ニューバランス レディースの119番、さらには自衛隊、政府要人の携帯電話など、重要な通信を確保するための特別な基地局だからだ。
■ キッカケは3.11
2011年3月11日の東日本大震災。地震や津波によって多くの企業が工場などの設備を破壊されたが、ドコモも例外ではなかった。携帯電話に電波を飛ばす基地局の倒壊や故障が相次ぎ、翌12日以降は東北地域において最大6720もの基地局がサービス停止状態に陥った。
故障の原因の9割は長時間かつ大規模の停電。通常の基地局には停電時でも約3時間程度、電力を確保できる非常用のバッテリーが付属しているのだが、このバッテリーでは到底及ばなかった。
そこで、ドコモは当時の山田隆持社長の指揮のもと、復旧作業と並行して基地局のバッテリーを増強したり、衛星回線を利用するシステムを開発するなど、災害対策の抜本的な見直しを進めていった。大ゾーン基地局もその一環で整備されたものだ。
大ゾーン基地局は人口が密集し、警察や消防、病院や都道府県庁といった重要な施設がある地域を中心に配置されている。
カバーする範囲は半径7キロメートルで、通常の基地局(数百メートルから数キロメートル)よりかなり広い。想定しているのは首都直下型地震だ。カバーするエリアの40%程度の基地局が倒壊もしくは故障などでサービスが提供できない状況になったときに補助的に発動させる。
ちなみに、アンテナから飛ばすのは高速通信のLTEではなく3Gの電波で、主に800メガヘルツの周波数帯だという。
設置には厳しい条件が求められる。地震に耐える建物の堅牢さはもちろん、より遠くに電波を飛ばすための高さが必要だ。また、停電時でも安定して電源を確保するため、自家発電設備もしくは大型のバッテリーが必要となる。そのため、高層ビルの屋上やアンテナ設備の鉄塔などに設置されるケースが多い。
■ 全国104カ所に設置
都内では、ドコモ代々木ビルのほかにドコモ本社が入居する山王パークタワーなどに設置されている。全国では104カ所あり、ドコモはこれを1年足らずで整備した。「とにかくスピード重視というトップの指示で、設置場所の確保を優先して進めていった。エリアごとの電波の調整は後回しだった」(サービス運営部の小野田穣主査)。
設置後も、運用面での改善は続いている。既存のシステムにどう組み込めば運用しやすいか、各部門の担当者で議論を重ねていニューバランス ランニングシューズったという。今では、基地局の被害状況を反映し、どの地域のどの大ゾーン基地局を発動すれば通信可能なエリアを作れるか、といった判断も自動でできるようになっている。止まらない通信設備を目指し、進化は続いていく。