虹猫の話 いつの頃(ころ)か、あるところに一疋(ぴき)の猫(ねこ)がゐました。この猫はあたりまへの猫とはちがつた猫で、お伽(とぎ)の国から来たものでした。お伽の国の猫は毛色がまつたく別でした。まづその鼻の色は菫(すみれ)の色をしてゐます。それに目玉はあゐ、耳朶(みみたぶ)はうす青、前足はみどり、胴体は黄(きい)、うしろ足は橙色(オレンヂ)で、尾は赤です。ですから、ちやうど、虹(にじ)のやうに七色をしたふしぎな猫でした。