青い顏 | qqwwzxcのブログ

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古谷俊男(ふるやとしを)は、椽側(えんがは)に据(す)ゑてある長椅子に長くなツて、兩(りやう)の腕で頭を抱(かゝ)へながら熟(じつ)と瞳(ひとみ)を据(す)ゑて考込むでゐた。體(からだ)のあいた日曜ではあるが、今日のやうに降ツては何(ど)うすることも出來ぬ。好(すき)な讀書にも飽(あ)いて了(しま)ツた。と謂(い)ツて泥濘(ぬかるみ)の中をぶらついても始まらない。で此(か)うして何(な)んといふことは無く庭を眺めたり、また何(な)んといふことはなく考込むでボンヤリしてゐた。此の二三日絲(いと)のやうな小雨(こさめ)がひツきりなしに降續いて、濕氣(しつき)は骨の髓(ずゐ)までも浸潤(しんじゆん)したかと思はれるばかりだ、柱も疊も惡く濕氣(しつけ)て、觸(さは)るとべと/\する。加之(それに)空氣がじめ/\して嫌(いや)に生温(なまぬる)いといふものだから、大概(たいがい)の者は氣が腐(くさ)る。