朝…目が覚めたらジヨンの姿はなかった。
リビングに置き手紙…。
"会えて良かった。
これからバリなんだ。
鍵…ポストに入れておくよ。"
便箋の上の方に詰めて書かれたジヨンのクセ字…まだ、何か言いたそうな空いた空間を見ていた。
「ジウン…思い出さなくていい…忘れてろ」
ジヨンの辛そうに絞り出すような声が耳に残る。
見慣れない部屋を見回す…私…ここでジヨンと何かあった?
私の中の直感が言っている…。
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「ジウン?何かあった?」
この所、気づくとあの夜の事を思い出してる…ジヨンの声…ジヨンの熱…モヤのかかった記憶…。
「あっ?…ごめんドンウク…なんだっけ?」
「だから~、今夜の社長との会食!」
「あ…そうだったね…」
ドンウクには、あの夜の事はもちろん言ってない…記憶の事も…。
「もぉ~!上の空なんだから~!」
「ごめん…」
ドンウクが私のローブをズラし後ろから首筋にキスを落とす。
「何を考えてるか当ててやろうか?」
ドンウクのイタズラっぽい目がガラスに写る。
「な…何も考えてないよ」
ローブが肩を滑り肌が露わになる。
ドンウクが左腕にいまだ赤く残る大きな傷跡にキスをした。
「欲しい…」
退院して一緒に住んではいるものの、ドンウクは私に触れなかった。
「そっ///そんな事、考えてないしっ/////」
「ふっw…違うw…今は俺が考えてる事…w」
ドンウクの長い指が私の顎を持ち上げる…そのまま唇を塞がれる。
んっ…/////
…何か…違う…何?
私の肌を這うように滑るドンウクの指…。
ゾクッ!
〈「ありがとう」〉
耳元で囁く父さんの声…。
「イヤ!」
思わずドンウク手を払い除けてしまった。
「あ…ごめん…そんな気分じゃ…」
驚いた顔のドンウクの目つきが変わった。
私の腕を掴むと私をベッドに投げる。
ベッドに弾む私の体に覆いかぶさるようにドンウクが乗った。
「辞めて!」
一言も発せず、ただ私の肌をむさぼるように唇を這わす。
「お願い…辞めて!」
ドンウクの動きが止まった…。
刺すような視線で見下ろされる。
「俺はダメでも、アイツならいいの?」
冷めた言葉…。
「えっ?」
アイツ?…アイツって?
「…悪い…支度しよう…」
体が軽くなった…ドンウクが私に背を向け振り返らずに洗面所に向かう。
「ねぇ!ドンウク!…何を知ってるの?…何を言わないでいるの?…アイツって…誰?」
答えるハズのないドンウクの背中に言った。
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ジウンが最近、上の空になるのが気になっていた…あの部屋でパニックを起こしたせいだと…思ってた…でも…何か違う気がする…ずっとジウンを見てきた俺の勘…やはり早く事を進めた方が良さそうだ。
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「ヒョン、お待たせしてすいません」
「お久しぶりです、オッパ」
ヤン社長との会食…ジヌさんもいる…。
「ジウン、体調はどうだい?」
ヤン社長が労わるように聞いてきた。
「はい、ご心配かけてスイマセン。大丈夫です」
「大丈夫だよな~?ちゃんと俺が大事にしてますからっw」
ドンウクが私の肩を抱き顔を覗く。
「…うん…」
さっきの刺すような視線を思い出していた…。
「ははっw相変わらず仲いいなぁ~w」
ジヌさんが目を細めて笑う。
「当然♬」
ドンウクの機嫌のいい声が耳につく。
何だろ?…この居心地が悪さ…。
「ジウンちゃん?」
後ろから声をかけられ振り向くとSPYオッパ…。
「ご無沙汰してます」
「大変だったね~、もういいの?」
「はい」
「俺が手厚く看病してるからなぁ~w」
ドンウクが楽しそうに会話に加わった。
…それからも会食の人数は増え、気がついたら貸し切った個室はいっぱいになっていた。
「ジウン?大丈夫?」
疲れてうつむく私にドンウクが聞いた。
「あ…うん…こんなに多勢集まるって聞いてなかったから…」
「そっか…言ってなかったね…ごめん。急遽、集まってもらったんだ」
「…急遽?」
「うん、大事な発表を聞いて欲しかったから」
「…大事?…大事って…」
そう私が言いかけるのを手で制しドンウクが立ち上がった。
「え~、お集り頂いた皆様、ここで大切な発表がありま~す!俺達…」
ドンウクが私の肩を抱き立ち上がらせる。
「婚約します!」
えっ!!!!!
「おーーーーーーーーー!♬」
「おめでとうーーーー!」
「やったな!」
「とうとうかっ」
「長かったな~w」
「幸せにな~!」
その場にいた人達の大きな歓声…鳴り止まない拍手…。
「あ…ドンウク…」
戸惑う私の声がかき消される。
「社長!そう言う事なんで!…いいですよね?♬」
「はっはっwいいも何もw発表してから言われてもなぁ~wwwジウン、おめでとう!」
その場の誰もが喜び、祝福の言葉を口にした…私の気持ちを置いてきぼりにして…。
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「ドンウク…どう言う事?」
部屋に戻って、ようやく2人きりになれた時に聞いた。
「えっ?何が?」
お酒が入って上機嫌のドンウクは既に眠そうな目をしてる。
「婚約って?」
「あ~、いいだろ?世間にも俺達の事は公表されてるし、それにおじさんからも了解取ってるんだ」
「…父さんに会ったの?」
「ん?…あ…まぁね」
「そんな事、言ってなかったじゃない!」
「そう?言わなかったっけ?」
トロンとした目でトボけた事を言うドンウクに無性に腹が立った。
「何を隠してるの?私に…」
「何も…」
「ウソ!あなたは何か大事な事を知ってて私に言ってない事があるハズ!」
確信はなかった…でも、私の中に生まれたドンウクに対する疑心感は止まらなかった。
「ドンウク!!!!」
私に背を向け横たわるドンウクの肩が規則的に深く上下する…寝てる…。
持って行きようのない憤り…ぶつけようのない不安…コートを羽織り、一人部屋を飛び出した。
行くあてなんてない…私は誰?
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