個室に案内され、先に飲み物が運ばれてきた。
「じゃ~、ヒロのケガが治ったお祝~い♬」
スンリが仕切る。
「カンパーイ!」
それぞれにグラスを合わせみんな一気に飲み干した。
「あれ?ヒロはワインじゃないけどいいの?」
テソンが聞いた。
「だって、ご主人様がダメって言うんだもん」
口を尖らして文句を言う。
「飲んだらすぐ寝ちゃうだろ?肉食えなくても知らねーぞ」
「それもイヤだ」
しぶしぶビールを追加する。
肉が運ばれ、スンリが手慣れた手つきで焼いて行く。
「私がやるよ」
「いいの。これは俺の仕事だから!それに、今日はヒロがゲストなんだから!」
「うん…ありがとう」
スンリに任せてお腹いっぱい食べた。
アルコールが入って、みんなホロ酔い気分で機嫌がいい。
良かった…私の取り越し苦労だったみたい。
あの更衣室の出来事を心配してたけど…兄弟同然のメンバー…シコリなんて残さないんだね。
まだ食べ足りないスンリの為に、今度は私が肉を焼いてあげる。
「アツッ!」
「どーした?」
隣に座っていたジヨンが心配そうに覗き込んだ。
「…あ…大丈夫…ちょっと火傷しちゃったみたい…冷やしてくるね」
そう言って席を立った。
…おかしい…こんなに水ぶくれになるなんて…。
トイレに行く。
とにかく冷やそう。
あいにくトイレには長蛇の列だった。
…どうしよう…。
「あの…何か冷やす物ないですか?」
お店の人に声をかけた。
「火傷しちゃって…」
すると店員さんが、厨房奥にあるスタッフ用のトイレに案内してくれた。
「ありがとうございます」
水を流しっぱなしで、大きな水ぶくれができた右手人差し指を冷やす。
いつもなら赤くなるだけで済むはずなのに…。
冷たい水が他の指を凍らせる。
もう…こんなんでいいかな?
蛇口を閉めようとした時、聞き慣れた声が後ろからした。
「もっと冷やさなきゃダメだよ」
「タプ!…どーしてここに?」
「いいから!もっと冷やして」
そう言うとタプは私の後ろから手を伸ばし、右手を押さつけながら冷水を当てさせた。
タプの息が耳にかかる…。
洗面所の鏡を見ると、顔を寄せ合いピッタリとくっついたタプの顔が写ってた。
タプの目は私の手元を見たまま。
「指…おかしいんじゃないのか?」
タプの甘く低い声が耳元で響く。
「え!?…そ…そんな事ないよ…大丈夫…なっ…何で?」
「鉄板に長い時間、指がついてた」
「え!!!そうだった?」
思わず口走った。
慌てて口をつぐむ。
だから…だから、こんな火傷したんだ…指の感覚が鈍いから…気づかなかったんだ…。
「やっぱり…何かあるんだね?…指…」
視線を鏡に戻すと、タプと鏡の中で目があった。
鋭い視線…でも、どこか暗い。
「あ…」
指の感覚の事は誰にも言っていない…タプには絶対に知られたくなかった。
「指は動くの…だけど…感覚が鈍くって…でも、大丈夫!先生は徐々に良くなって行くから~って」
「俺のせいだな」
「違うよ!違う…タプのせいじゃない!」
押さえられてた手を振り払い、タプと向き合う。
「違う…違うから…本当に…」
両手を伸ばし暗い目をしたタプの両頬を包む。
タプの大きな手が私の右手にそっと手を添える。
「ごめんな」
今にも泣き出しそうなタプの顔…。
「そんな…本当に大丈夫だから…」
タプは頬に当ててた私の右手を外し、
悲しそうに冷やして冷たくなった傷口にキスをした。
きっと暖かいキス…感覚が鈍くなった手ではそれを感じる事ができなかった。
*********************
ずっとヒロを見ていた。
ジヨンの隣で嬉しそうに微笑むヒロ…美味しそうに食べるヒロ…頬を膨らませたり、口を尖らせたり…ふっふっふw表情がコロコロ変わってマジで飽きないw
どんなヒロも大きな目はいつだってキラキラ光ってる。
そんな様子を黙って見ながらワインを飲んでいた。
「アツッ!」
ヒロが言葉は発する少し前から、ヒロの指が鉄板についているのを見ていた。
ん?あそこだけ熱くないのか?
他はジュージュー肉が焼けている。
そんなワケないよなっ…慌ててヒロに声をかけようとした時「アツッ!」っとヒロが言った。
席を立つヒロの後を追いかけるようにして個室を出た。
トイレ?
長い列にヒロの姿はない。
店員の一人に声をかけた。
「こんくらいの小さいショートカットの子知らない?」
自分の胸より下に手をやりヒロの大きさを示した。
「あ~、その人なら奥のスタッフ用のトイレに案内しました。火傷したって…」
「ありがとう…行っていい?」
「はい、どうぞ」
場所を教えてもらい奥へ入った。
洗面所でヒロが指を冷やしてる。
流してる水の音が止まった。
「もっと冷やさなきゃダメだよ」
「タプ!…どーしてここに?」
「いいから!もっと冷やして」
ヒロの質問には答えず、後ろから手を伸ばし、ヒロの小さな右手を押さつけながら冷水を当てる。
ヒロの柔らかい髪が顔にあたる。
冷たい…徐々にヒロの手と同じ温度に自分の手がなる。
痛いくらいだ…。
「指…おかしいんじゃないのか?」
「え!?…そ…そんな事ないよ…大丈夫…なっ…何で?」
「鉄板に長い時間、指がついてた」
「え!!!そうだった?」
慌てて口をつぐむヒロを見て確信した。
「やっぱり…何かあるんだね?…指…」
鏡の中でヒロと目が合う。
慌てて目を伏せるヒロ。
「あ…」
言いにくそうにヒロが話し出した。
「指は動くの…だけど…感覚が鈍くって…でも、大丈夫!先生は徐々に良くなって行くから~って」
「俺のせいだな」
「違うよ!違う…タプのせいじゃない!違う…違うから…本当に…」
両手を伸ばし俺の両頬を包む温度違うヒロの小さい手…。
冷たいヒロの右手にそっと手を添えた。
「ごめんな」
「そんな…本当に大丈夫だから…」
必死なヒロの顔…胸が痛い。
ヒロの右手を外し、傷口にキスをした。
俺がつけた傷…消えない傷…消せない過去…。
神様…どうか、ヒロの手を治して下さい。
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