我が家で作った日本の伝統料理や江戸料理などのレシピの備忘録。
本日はふたたび江戸時代の代表的な料理本「豆腐百珍」に戻る。
「豆腐百珍」には葛あんをかけたものも多い。
今回取り上げるのは尋常品に数えられたシンプルな「高津湯豆腐」。
先日、あらためて作ってみた。本当ならもう少し寒い季節になってからのほうがよいかもしれないのだが。
「豆腐百珍」の「高津豆腐」の記述は以下の通り。
絹ごしとうふを用い
湯烹して
熱葛あんかけ 芥子おく
又 南禅寺ともいふ
大坂高津の廟の境内に 湯とうふ家三、四軒あり
其料に用ゆ豆腐家、門前に一軒あり
和国第一品の妙製なり
京師に南禅寺とうふあり
江戸浅草に華蔵院といふとうふあり
大阪ミナミの高津神社境内の湯豆腐屋は名高く、中でも「藤壺」という料亭はかなり後まで存在していたようだ。
ちなみに京都の南禅寺界隈にはいまも湯豆腐の専門店がいくつもあるが、ここでいう「南禅寺豆腐」はお椀形のいわゆる「おっぱい豆腐」のことだろう。
浅草の華蔵院は現在の元浅草の白鴎高校のそばにある。ここにも饅頭形の「華蔵院豆腐」を売る店があったという。
<高津湯豆腐を作る>
我が家では通常、豆腐は「もぎ豆腐店」の「三之助とうふ」を使うことが多いが、今回は大本山南禅寺御用達と書かれた包装の文字がいささか仰々しい京都「服部」の絹ごし豆腐を使う。
<材料> 2人前
絹ごし豆腐 1/2丁(1丁の4半分を2つ)
葛あん
・だし汁(鰹節と昆布の一番だし) 1カップ
・醤油 大さじ1
・味醂 小さじ1/2
・酒 小さじ1/2
・水溶き葛(または片栗粉) 適量
溶き芥子 少々
<作り方>
① 豆腐を水から温め、ぐらっときたら止める。
② だし汁に醤油、味醂、酒を加えて味を調え、葛を引きとろみをつける。
③ ①の豆腐を崩さないように網杓子などで湯から上げ、水けを布巾などにのせて切る。
④ ③を器に入れ、上から②を静かにかけ、溶き芥子をのせる。
※ 葛あんの味わいが水けで薄くならないようにするのが肝心。
湯から上げる際は、網杓子ごと乾いた布巾にのせ、水けを切るとよい。
※ 葛あんはたっぷりかける。
葛あんをかけると冷めにくく、とろみが豆腐にまとわりついて最後まで安定してうまみを味わえる。寒い時期だけでなくオールシーズンに楽しめる。
<おまけの話 笹乃雪、煮やっこ、湯豆腐など>
※なお、創業が1691年(元禄4年)だという根岸の豆腐料理店「笹乃雪」の名物料理「あんかけ豆富」は、この「高津湯豆腐」と同様のものだ。ここも溶き辛子を載せている。
葛あんを入れずにだし汁だけで作れば、現代の大阪の居酒屋などで言うところの「湯豆腐」になる。あちらではねぎを散らしたり、おぼろ昆布を載せたりする。
そういえば、渋谷の名物立ち飲み居酒屋「富士屋本店」(再開発地区にあったため誠に残念ながら去年10月閉店した)の「湯豆腐」も大阪の「湯豆腐」と同じようなものだった。
写真は我が家風の「煮やっこ」。味が濃いことを除けばほぼ大阪の居酒屋の「湯豆腐」だ。
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