'12年リリースの25thもクソポジティブなキラーリリックが炸裂した傑作アンセム。
綾瀬はるかの他人の癇を逆撫でするには有り余るポテンシャルをフルに発揮した実写映画「ひみつのアッコちゃん」主題歌として書き下ろされた一曲なんですが、
見る前から駄作とわかってる映画に何かを書き下ろさなきゃいけない気分ってどんなだろう?とか考えながらも、当てこすりのように名曲を当てがって来る感じがYUKIなりの横綱プロレス?
それでいて予定調和的でありながらなかなか悪くない成長物語~人情物にまとめられていた映画も悪くなかった。
え、オレ?もちろん見ましたとも。
オトナになったアッコ=綾瀬はるかがひょんな事から会社でOLをやってみつつ、オトナ社会の暗黙のルールを無視して縦横無尽・傍若無人に振る舞う姿に忘れていた何かを思い出した周囲の人間が突き動かされ、結果会社は救われました。チャンチャン。的な説明で約2時間を要約出来る程度の取るに足らない映画だった訳なんですが、でもやっぱ綾瀬はるかは可愛い。
で、更にそれがYUKIらしい言語感覚でシンプルかつ詩的に要約されてるのが2番のリリック。
「正直者はバカを見ない。騙すのなら騙されていたい。損得感情も結構だけど義理と人情捨てられないわ。」
これ、痺れるよね。
義理人情なんて時として邪魔になる訳だけし、いっそ感情も慈悲もない「人間じゃないモノ」になった方が業務上都合の良い場面もある。でもそれを失くしたらもう「自分」じゃないからね。
そして「個」を大事にしない会社に未来はない、とまでは言わないけど、そんな環境で学べ得るコトの上限なんて見えてる気がするし。
レイドバックしたたゆたうようなテンポと、キャッチー過ぎない洗練されたメロディーライン、適度に煌びやかなアレンジによって、そんな教訓が逆に凝り固まったオトナの脳みそにこそ響く珠玉の「自分見つめ直しソング」です。
ミス俺応援団団長・YUKI先輩3連弾ラストは、昨年夏リリースからこっち、オレに欠かすコトの出来ない最新クラシック。通算27thシングル。
「あまちゃん」から着想を得たと言う前向きな歌詞は、エレクトロサウンドにハマる語感をこそ重視しつつ、社会でサバイブする「ロンリー」な人々にブッ刺さるメッセージ性に富んだ歌詞が良い。
グルーヴ重視故に抽象的でありながら、そこからもちゃんとメッセージが浮かび上がって来るのがYUKIの気が利いてる所。
上司であり、先輩であり、同僚であり、或いは弱気な自分であり、自分にとっての目の上のたんこぶちん的な「ダサいダンシングクイーン」なんて誰にでも想定出来るアイコンだし。
音楽に限らず映画でもドラマでも漫画でも小説でも、オレ常々思ってて常々期待してるのが「正しいコト」じゃなくて「本当のコト」が聴きたいし、見たいんですよね。
「図書館戦争」よろしく過剰な言葉狩りや、映画でも残酷な描写は控えられ、不必要な自主規制で差別表現は一掃され、結果何について何を表現してるのかもわからない形骸化された描写だけを繋いだモノばかり。
しかも規制してる側も既に誰への配慮なのかわかんなくなってる。
仮想敵ならぬ「仮想弱者」と言った所か。
話が大幅に逸れますが、ある時期まで「バカジャコ」と呼ばれてた魚が今は、まあどう言った理由か知りませんが「リュウキュウキビナゴ」と言う名称に改められてるんですね。
「バカ」が差別表現だとして、じゃあまさかそれってジャコに対しての配慮ってコト?やり過ぎよ。良いじゃない、バカジャコ。可愛いじゃん、バカジャコ。キャッチーだし。
まあコレは極論的な例えだけど、そうやって耳触りの宜しい、目に気持ちが良い表現だけ繋いで一作品になった所で、人の心を揺さぶる魂の一曲にはなり得ない。
いやいや、ポップミュージックなんてそんなモンだろう?ええ、そうだとも。
でも視覚的にショックだからナイフで切られても血を流さない、体に悪いからタバコなんてモノはこの世に存在しない物とする、事故に遭ったら危ないから車で逃走する時もシートベルトをする、バカをバカと思っちゃいけない、木から落ちたら危ないから木を切り倒す、人は一人じゃない、人間はみんな平等。
全部「正しい」けど、けして「本当」のコトじゃない。
SMAPの"世界にひとつだけの花"が未だにどうにも好きになれないのは「正しい」けど「本当」じゃないから。
女子全員がシンデレラ?
運動会はみんなで仲良く一等賞?
笑わせないで。
置かれた場所で咲き誇る花になる方法を知りたいのよ、オレは。
誰にも寄り掛からず、甘えず、自分の足で立ち、自分で自分を奮い立たせる。
裏を返せば寄り掛かられたくないし、甘えて欲しくない、自分の足で立って欲しいし、アンタはアンタで奮い立ってて。
「ロンリー」な者同士だからこそ、いざと言う時助け合える。
自分の役割を理解してるからこそ、いざと言う時にどう戦えば相手の為にも自分の為にも良いのかわかると言うもの。
その意味で「誰でもロンリー」、この言葉は真理だと思う。
それをあくまでポップミュージックの枠内でやってのけるYUKIもまた、随分ロンリーよ。