とりあえず、妖刀はこのままでいいらしいのでそのまま引き返す。
思ったより蔵の中が埃まみれで結構汚れたのでもう一回お風呂入りたい。
そう思いながら兄さんの背中を追っていくと、階段を上がりきったところでふっと、兄さんの姿がなくなった。
「え、兄さん?」
暗いところでも慣れればほとんど普通に見えるから見失ったなんてことはない。それに、兄さんの気配すら感じられない。
上がりきって周りを見ると蔵の様子も何かおかしい。
地下と同じ石造りで、何となく西洋かぶれしたような。蝋燭の灯りもついてるし埃っぽくはなくなっている。
まるで、ヨーロッパの古城のような・・・。
しかし思考は突然現れた何者かによって遮られる。
ヒュカンッ。
剣が振り抜かれる音と同時に、地下に降りたときに袋から出したままずっと握っていた月羽で半身を抜いて受け止める。
「はっ!」
「きゃ・・・ッ!?」
抜刀で剣を弾き、返す刀で峰打ちを襲撃者に叩き込む。硬いモノがひしゃげる感触を刀越しに感じつつ振り抜くと、襲ってきた者は軽く数メートル飛んでいった。
あたし、こんなに腕力あったけ?心なしか月羽も軽い気がする。
襲ってきたのは私と同じくらいの年恰好の女の子。
なぜか、RPGのコスプレみたいな鎧を着ているが。
ひしゃげたのは左の手甲みたいだ。とっさに守れたあたり、かなりの実力者だろう。
「・・・随分なご挨拶ね」
「黙りなさい!盗人かなにか知ったこっちゃないけどこの私がボッコボコにしちゃうんだから!」
体勢を立て直してビシッと剣をまっすぐに構える彼女。
口調が妙に芝居臭いのが気になるけどそれはそれ。
「って、あたしは盗人じゃな・・・」
「問答無用!」
彼女が斬りかかってくるのを完全に見切って剣を弾き、左手でチョップ。
飛んでいった剣が石の床に落ちた音が響くのと、彼女が頭を抱えてうずくまるのはほぼ同時。
「ごめんなさい、ごめんなさい!なんでもしますからもうぶたないでぇ~!」
いじめられっ子のごとく泣き出す少女。ってあたしいじめっ子?
戸惑うあたしを余所に、誰も来ないのが不思議なくらいの声量で泣く彼女。
と言うか威勢の割に・・・いや、あえて言うまい。