鞘の紋様が揺らめき、柄が手に吸いつくような感覚を覚える。
部屋中を赤い妖気が渦巻く。
しかし・・・。
「ぬ、抜けない・・・」
何かが引っかかってるわけでも錆び付いてるわけでもないのだが、何故か抜けない。
「抜けない奴が無理に引っこ抜くと狂い死ぬぞ」
「それ先に言いなさいよ!?」
うっかり死ぬところだったじゃない!
思わず、鞘に入ったままの妖刀で兄さんの脇腹をひっぱたいた。
今までの剣速とは明らかに違いすぎる、と言うか人間離れした速さで兄さんが反応するより早く打撃が食い込んだ。
「ぐお・・・っ。抜けない癖にちゃっかり選ばれてやがる・・・」
え?
どういう事か兄さんに訊こうとすると、突然刀が輝き出し、赤い光の粒となって消えた。
鞘に刻まれていた赤い紋様が私の左腕に移っている。
あの気持ち悪い気配は跡形もなく消えていた。
「・・・その刀は緋目鬼喰と言ってな。古来妖魔退治に用いられたモノなんだが、余りにも鬼を斬りすぎたために性質が変化し、斬ったモノの力を溜め込み過ぎてこれ自体が妖刀になったんだ」
叩かれた脇腹をさすりながら兄さんが言う。
抜こうとした者が発狂するほど濃縮された妖気を持つ刀。
それがなんで私に?
「まあ、俺も初めて見たわけだから何とも・・・」
オイ待て兄貴。
「・・・自分もよくわからない危ないモノを可愛い妹に押しつけたのかい」
「まあ、一応うちの血筋の娘しか触れられない事になってるからな。あと自分で可愛いとか言うな」
ああ言えばこういう。
曰く、うちの血筋はずっと男しか生まれなくて娘が出来たのは何百年ぶりとかそんなレベルらしい。
だからってさ・・・。
「事実爺さんの弟が触ったら手が着けられないことになって・・・」
「だからなんでそんなのを妹に触らせられるのよ!」
あー。伝承とか真面目に信じてる人って、ある意味呪い以上に怖いわ。