それからすぐにお風呂を出て、物置・・・見た目は古い蔵みたいな所・・・の前で兄さんを待つ。
言われたとおり袴を着て、袋に入れたままの月羽を持って待つ。
髪はいつも通りポニーテールに結っている。
夏とはいえ夜なので結構冷える。
お風呂上がりだし、袴ってそんなに厚くないし。
「へくちっ」
うぅ・・・、早く来なさいよ・・・。
「おう、早いな」
兄さんも袴を着て真剣な顔をしている。
「一応ちゃんとした儀式だからな、気を引き締めてくれよ」
・・・儀式?
思わず愛刀の「月羽」を握る手に力が篭る。
これはちゃんとした『真剣』。実際に使ったのは数回だけど…。
でも、辛いとき、落ち込んだときはこれが手元にあると凄く落ち着く。
「ま、そんなに肩肘張らなくてもいいが。じゃあ、入るぞ」
物置の鍵を開け、中に入っていく兄さんを追いかける。
暗いところに立っていて目が慣れていたので、兄さんの背中はよく見える。
足元に気をつけながら奥にはいるとやっぱり埃だらけで蜘蛛の巣も張っている。
兄さんは一番奥の箪笥の前に立ち止まり、その引き出しの一つを押し込む。
するとカチリ、と音がして箪笥の横の床が少し浮いた。
そしてその浮いた板の端を掴んで開けた。中は暗いが、下に続く階段になっていて、兄さんは迷わず降りていく。
あたしは暗さと埃っぽさに少し躊躇ったものの、ここで待ってても仕方がないのでついていく。
結構急で恐い。
しばらく進むと足元が平らになった。
兄さんはポケットから取り出したライターをつけ、壁に掛かっている蝋燭に順番に火をつけた。
全ての蝋燭に火をつけると明るくなり、暗い石造りの部屋が映し出された。なんだか、凄く不気味。それに・・・。
「ここは・・・?」
「心配するな。盗られたら困るもんが置いてあるだけだ。まあ、盗むにしてもそこいらの人間が触れればたちまち発狂するがな」
・・・部屋の奥から強烈な嫌な気配が漂っている。
一度だけ見た、人の「死」の臭いに似た、それが何倍にも濃くなったような気配。
怖くなって袋にしまっていた月羽を取り出す。
兄さんについて部屋の奥に行くと、一振りの太刀が薄暗い蝋燭の灯りに照らし出されていた。
鞘は黒く、赤い紋様が彫り込まれており、柄紐は血のような暗い赤。
妖刀としか言いようがない程の禍々しさが溢れている。
明らかにこの刀から嫌な気配が溢れている。
そんな刀をあたしにどうしろっていうのよ。
「これを抜いてみてくれ。大丈夫だ。これに耐えられるように今まで散々鍛えたからな」
兄さんの声も震えている。
・・・そんな声で言われても不安を煽るだけ。
でも、私は。
「わかったわ。やってやろうじゃない」
あたしも人のことを言えないくらいに震えていたけど、精一杯強がって刀と向き合う。
何故だろう、そうしなきゃいけない気がした。
そして、刀をゆっくりと台から取り上げた。