15日午前の参院予算委員会で、野田首相は「国益を損ねてまでTPPに参加することはない。」鹿野農水相は「交渉参加を前提とするものではないと理解している。」と、それぞれ述べた。
しかし、アメリカ側はそうした受け止め方をしておらず、政府の「包括的経済連携に関する基本方針」に記載された、「すべての品目を自由化交渉対象とする」とした内容を、野田首相によるTPPでの発言と勘違いした。

この事例だけを見ればアメリカ側の過失だが、野田首相の表現が曖昧さが原因でこのような齟齬が起こったと言える。
慶應義塾大学経済学部教授の金子勝氏は、ツイッターで「野田首相の「交渉参加に向けて協議する」は、国際的には「参加する」を意味し、国内的には「協議する」の2枚舌のようです。」と述べている。
アメリカ側からすれば、騙されたような気分だろう。

当初「交渉参加に向けて協議する」には、反対派の矛先をかわす思惑が込められていた。
当然野田首相の頭の中では、最終的にTPPへの参加を目論んでいたはずである。
ところが、その言葉が原因でアメリカの誤解を招き、交渉参加の9ヶ国が集まった会合に呼ばれず、流れが悪いほうへと傾いている。

野田首相は、玉虫色の言葉で反対派を騙すつもりが、まるで自分が自分に騙されているような錯覚に陥ってはいないか。

「論破ではなく説得で」と言ったのは野田首相自身である。
反対派への説得を断念し、国民に十分な説明をしないまま物事を運ぶようでは、これからも政権運営は難しいだろう。

自身に確固たる信念があるなら反対派が折れるまで説得するのが野田流だろう。
信念がなかったり説得が不可能ならば、政権を手放すのがよろしい。