2023年、山崎貴監督

 

作家の百田尚樹さんがゴジラについて、これはもう一つの「永遠の0」ではないか、というようなことをおっしゃっていた。映画鑑賞までに半分しか読めなかったが、今まで読まなかったことが悔やまれる。映画を見て分かった気になっていた。その映画さえだいぶ前に見て忘れていることが多い。もう一度見たいと思う。

 

モノクロ映像が敗戦後の日本のドキュメンタリーのようにも見え、怪獣映画、SFと片付けられないリアリティがある。映画サイトに、視覚情報が少ない(色がない)ことで不安感や恐怖を増す、という感想を書いている人がいた。確かに顔や服の汚れが血なのか機械油なのか分からず見入ってしまった。

ゴジラが熱線を吐くと、きのこ雲らしきものが上がる。アメリカは原爆製造のコスパを上げるため広島、長崎の後も原爆を落とし続けるつもりだったという話を思い出してしまった。私たちの祖父母が潜り抜けてきた困難を思うと泣けてくる。

ゴジラから故郷と家族、仲間を守るため、元軍人、科学者、技術を持った民間企業などが立ち上がる。占領下で政府は脆弱、軍は解体、米軍も当てにできない。政府も役所もグダグダの現代と同じだ。作戦考案の科学者は戦時中、武器を開発していたというが、桜花などを作っていたのだろうか。

今作に出てくる駆逐艦「雪風」は数々の戦いを生き延びて終戦を迎えた。奇跡の駆逐艦と呼ばれたらしい。

主人公が乗る戦闘機「震電」は実戦に投入されずに終わった。独特の形が美しく、ジェット戦闘機に進化していく過程のようだ。

 

どの俳優も役にピッタリはまって素晴らしかった。神木隆之介さんは童顔で君付けで呼びたくなるが、生き残ってしまった特攻隊員の苦悩を見事に演じていた。浜辺美波さんは忍耐強く愛情深い大和撫子。控えめな笑顔にほっとする。子役の女の子もまだあまり喋れないところなど幼気だ。家族を失った近所の女性を安藤サクラさん。彼女は演技の上手さが鼻について好きではないのだが、今回は素晴らしかった。感情の移り変わりが自然でリアルだ。整備兵の青木崇高さんと主人公の、俺の戦争はまだ終わっていない、という話はぐっと来た。雪風元艦長の田中美央さんは大東亜戦争を戦い抜いた軍人らしい面構えだ。

 

映画を見ながら「永遠の0」を思い出し、泣いてばかりだった。嗚咽を漏らしてしまうところもあり、我ながらびっくりしたが音に紛れてよかった。第1作の「ゴジラ」を見たくなった。