1996年 アメリカ

 

初めて見たときは無知蒙昧で、ジュリエット・ビノシュかわいい、美男美女の悲恋きれい、という本当にどうしようもない感想だった。英印軍中尉のキップと従軍看護婦のハナが結ばれるのも、ジュリエット・ビノシュ好きをこじらせて気に入らない展開だった。年を取って少しは学び、少しはましな感想を持ったと思う。

 

英国訛りの患者はラズロ・アルマシーというハンガリー出身の貴族で、王立地理学会の会員としてサハラ地域の地図を製作していた。耳慣れない外国の名前で格調高い英語を話すというだけで怪しい。地図製作といえば猶更。キャサリンを救いに戻れなかった事情は単なるメロドラマではなかった。

ラズロ・アルマシーは実在の人物で、当たり前だが映画とは違う。ドイツのスパイだったらしい。女性は恋愛対象だったのかどうか、男性あてのラブレターが残っている。

 

キップはシーク教徒。シーク教徒の多くは裕福で教育水準が高い。控えめな態度で美しい英語を話し爆発物の知識を持ち地雷や不発弾の除去に当たる。部下はイギリス人だ。イギリス支配下の複雑さ。階級は上だが危険は押し付けられる。部下は安全地帯にいて上司のお目付け役でもある。だが上層部の思惑とは別に、共に危険をかいくぐってきたインド人とイギリス人は友情を感じている。部下のイギリス人を演じているのはモース警部やハサウェイ巡査部長の相棒ルイス、ケヴィン・ウェイトリーだ。

 

カナダ情報部隊の工作員カラヴァッジオはドイツ軍に拷問され親指がない。ヤクザは親指は詰めさせないらしい。ウィレム・デフォーが演じると何かとんでもないことを考えていそうで、最後にイタリア人女性といい感じなのが拍子抜けする。

 

冒頭に出てくる複葉機タイガーモスはジェフリー・デ・ハヴィランド設計。妻キャサリンの不倫に怒りアルマシーに突っ込んで亡くなった夫の名もジェフリー。