『アスピリン喘息』は別名「NSAIDs過敏喘息」とも言います。
「NSAIDs」は「非ステロイド性消炎鎮痛剤」のことで、ロキソニン、イブプロフェン、バファリン、ボルタレンなどが有名です。(酸性NSAIDs)
小児にはまれであるが成人喘息の5~10%を占め、やや女性(男:女=1:2)に多く、30~40歳で罹患、副鼻腔炎や臭覚低下などを伴うことが多く、また症状は重症となることが多い非アトピー型喘息の一種です。
以前お話ししましたが、「NSAIDs」の多くはCOX1とCOX2の両方の働きを抑えて、消炎鎮痛作用を示します。
「熱」と「痛み」の原因には『プロスタグランジン(PG)』という物質が関係しています。
「PG」は、不飽和脂肪酸(必須脂肪酸)のひとつである「アラキドン酸」という物質が「シクロオキシゲナーゼ(COX1とCOX2)」という酵素に反応することによって生成されます。
(けがなどで体を傷つけるなど組織が損傷すると「アラキドン酸」から「PG」が生成され、「痛み」等が出現するということです。)
「アラキドン酸」がCOX1と作用すると、胃粘膜分泌促進や血管拡張などの『生理機能に関与』する「PG」が産生されます。
また、COX2と作用すると、炎症反応や発熱、疼痛などの『炎症や痛み、熱などに関与』する「PG」が産生されます。
そのため、「NSAIDs」でCOXの効果を抑えれば「PG」が産生されませんので、「熱」や「痛み」に効くというわけです。
しかし、「NSAIDs」はCOX2の効果を抑えることで「熱」や「痛み」を抑えるのですが、COX1の効果も抑えてしまうので、体の生理機能も阻害されるため胃が荒れるなどの「副作用」が生じてしまいます。
『アスピリン喘息』の人は、「NSAIDs」によるCOX(主に1)阻害により「PG」の産生が減少、相対的に「LT(ロイコトリエン、特にLTC4・LTD4)」産生の過剰が起こり「気道過敏症状」を起こすと考えられています。
(「LT」は白血球遊走促進作用や気管支収縮作用がある「気管支喘息」の原因物質でもある生理活性物質です。)
「アラキドン酸」はCOXだけでなく、「リポキシゲナーゼ」や「チトクロームP450(CYP)」によっても代謝されます。(アラキドン酸カスケード)
そのため、「NSAIDs」によってCOX阻害が起こると「PG」の産生が減少し、「LT」などの産生が過剰となり「気道過敏症状」を起こすのです。
以上のことにより、『アスピリン喘息』の人が「NSAIDs」によって「気道過敏症状」を起こすためアスピリンなどの「酸性NSAIDs」の使用はNGとなるのですが、「NSAIDs以外の薬物」や「添加物」「自然界のサリチル酸化合物」などの使用もNGとなります。
名称が『アスピリン喘息』となっているため「アスピリン(アセチルサリチル酸)」だけに対する過敏症と考えがちですが、「コハク酸エステル型ステロイドなどの医薬品」や「安息香酸Na」「パラベン」などの「添加物」、「ミント」や「キウイ」など様々なものにより「気道過敏症状」を誘発するため、『アスピリン喘息』の人は、「アスピリン」だけ注意しておけばいいとは限らず、また、「NSAIDs」は内服薬だけでなく「貼付剤」や「坐薬」などにも含まれているため、気づかずに使用してしまうこともあります。
「ミント」を含む練り歯磨き粉により約10~20%の人で主に「咳」を認めたというデータもあります(理由は香料の構造式がサリチル酸塩類似のためと考えられています。)ので、『アスピリン喘息』をお持ちの方や周りの方も日頃から注意をしましょう。
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補足:
『アスピリン喘息』の人が発熱したり痛みがある場合は以下の薬で対応します。
①添付文書では禁忌だが注意して使用する薬
(発作を誘発しにくく、アスピリン喘息で投与可能だが、重症の場合や症状が不安定な場合は使用しない薬。)
・アセトアミノフェン(1回300㎎以下)
・選択的COX2阻害薬(セレコキシブ) など
②安全に使用できる薬
(COX1阻害作用を有しないため安全に使用できる薬。)
・モルヒネ
・ペンタゾシン
・非エステル型ステロイド
・葛根湯 など
参考資料:
薬がみえる Vol.3(MEDIC MEDIA)
病棟でよく使われるくすり(編:荒木博陽)
参考URL:
https://ameblo.jp/qiph/entry-12485514643.html (『解熱鎮痛剤』を使い分けよう!)
https://ameblo.jp/qiph/entry-12485514611.html (なぜ『解熱鎮痛剤』は「熱」にも「痛み」にも効果があるのか?)
https://www.jspc.gr.jp/igakusei/igakusei_keynsaids.html
https://www.jspm.ne.jp/guidelines/pain/2010/chapter02/02_04_02_01.php
https://kotobank.jp/word/ロイコトリエン-662390
http://plaza.umin.ac.jp/~beehappy/analgesia/analg-nsaids.html#acid-NSAIDs
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/102/6/102_1426/_pdf