『ADHD』という言葉を聞いたことはあると思います。
『ADHD』は「注意欠陥・多動性障害(AttentionDeficit Hyperactivity Disorder)」と言い、小児期の疾患として取り上げられることが多いと思います。
文部科学省の2012年の調査では、小中学生53882人(小:35892人・中:17990人)中、ADHDにみられる「不注意または多動性・衝動性の問題を著しく示す」児童生徒は全体の3.1%となっており、男児のほうが女児より多いとされています。
(一般的に、ADHDの有病率は小児の場合、5~6%程度です。)
「男児」のほうが女児より多い理由として、小中学校では「落ち着きのない生徒」や「ぼんやりしている生徒」よりも「授業中に席を立って歩き回る生徒」や「騒いだりする生徒」のほうが目立ちやすく、その多動性は「男児」に多く見られるからです。
「女児」は「不注意」や「ぼんやりしている」子が多く、その場合目につきにくく、本人も周囲も気づかない場合が多いため、成人してから仕事などのトラブルがきっかけで『ADHD』と診断される場合が少なからずあります。
そう、成人でも『ADHD』は見られます。
日本人の成人の300万人以上は『ADHD』を持っていると言われ、有病率は3~4%となっています。(成人の場合、男女差はありません。)
『ADHD』の特徴として「不注意」「多動性」「衝動性」の3つがあります。
小児と成人の症状の違いを下記に記載します。
①不注意症状
A:小児
・気が散りやすく、忘れっぽい
・ケアレスミスが多い
・人の話を聞かない
・課題などを順序立ててできない
・整理整頓ができない
・物をなくしたり、置き忘れたりする
B:成人
・注意を持続するのが困難(会議や事務処理、読書)
・先延ばしにする
・仕事が遅い、非効率的
・混乱しやすい
・時間管理が苦手
・片付けが苦手
・物をなくしたり、置き忘れたりする
・約束を守れない
②多動性症状
A:小児
・過度におしゃべりをする
・落ち着いて座っていられない
・静かに遊んだり、課題に取り組むことができない
・あちこち歩きまわったり、身体をソワソワ動かす
・走り回ったりよく考えずに行動したりする
B:成人
・過度におしゃべりをする
・内的な落ち着くの無さ
・感情が高ぶりやすい
・自ら多忙な仕事を選ぶ
・薬やアルコールへの依存傾向
・目的のない動き(貧乏ゆすりなど)
③衝動性症状
A:小児
・うっかり答えを口に出す
・順番を待つことができない
・他人に口をはさんだり、邪魔をしたりする
B:成人
・易刺激的、短気
・思ったことをすぐ言う
・運転中のスピードの出しすぎ、交通事故
・喫煙・カフェイン摂取
・リスクある性行動
・衝動買い
なお、成人になってから『ADHD』を発症することはありません。
成人になってから『ADHD』の診断を受ける場合は、小児期の情報が重要になります。
学校で言われていたことや通知表、家族がどのように受け止めていたかなどの情報なども参考になります。
参考資料:
クレデンシャル 2018/No.121