以前「アナフィラキシーショック」についてお話ししましたが、実際、「アナフィラキシーショック」で死亡する人数は年間何人くらいなのでしょうか?
近年の人口動態統計によると、アナフィラキシーショックによる死亡数は、年間50~80人弱となっています。
その中でも特に多い原因は、やはり「医薬品」で20~40人ほどを占めています。
特に「造影剤」や「抗菌薬」、「筋弛緩薬」などの『注射剤』による発症が多いとされています。
「医薬品」が原因となる「アナフィラキシーショック」は、IgE抗体を介した反応に限定される「ハチ刺傷」や「食物」によるものとは異なり、メカニズムが不明な点が多いとされています。
また、投与後のショックから死亡に至るまでの経過には、「発症の場所」「原因薬物の投与経路」「症状進行の速さ」「医療従事者による判断および治療の内容」などの、様々な要因が関与し、以前まで安全に使っていた「医薬品」でも起こることがあり、『「アナフィラキシーショック」は、状況に左右され、あらゆる医薬品・複数回使用していた医薬品などでも起こりうる』という認識を持つことが重要です。
「アナフィラキシーショック」の統一した診断基準は、2010年頃まで存在しませんでした。
2010年頃から世界的に診断基準の整備が進められ、日本では2013年に一般社団法人 日本アレルギー学会において「アナフィラキシー対策特別委員会」が立ち上げられ、2014年に「アナフィラキシーガイドライン」が作成されています。
英国の「アナフィラキシーによる死亡事例の検討」において、心停止もしくは呼吸停止に至るまでの時間(中央値)は、
「薬剤」で5分
「ハチ毒」で15分
「食物」で30分
となっていて、薬剤性アナフィラキシーは他の原因と比べ、特に短時間で急変する可能性が高いと言えます。
また、薬剤性アナフィラキシーで死亡した55人の中で、心停止もしくは呼吸停止前に、治療薬である「アドレナリン(成人で0.3mg)」を投与(大腿前外側部に筋肉内注射)されていたのは、わずか16%であったという報告もあり、迅速な対応が行われていない(行うことができない)のが現状です。
「アナフィラキシー」の発症は予測困難で、ガイドラインもできたばかりとなっていますが、このような注射剤を投与される場合は特に、「前もって自身の服薬歴・投薬情報を医師に正確に伝えているか」「医療従事者が基本的知識を得ているか」「医療機関の体制が整っているのか見極める」が、患者さんが事前にできることだと思います。
参考資料:
医療事故調査・支援センター 平成29年 年報 事業報告(一般社団法人 日本医療安全調査機構 平成30年3月)内
~医療事故の再発防止に向けた提言 第3号 注射剤によるアナフィラキシーに係る死亡事例の分析~
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