体の約6割は「体液」です。
その「体液」は、腎臓で99%が再吸収され、完全に不要となった1%が「尿」となり排出されます。
「尿」の量は、水分の再吸収の量によって決まり、水の再吸収には「浸透圧」が関係します。
水は、半透膜を介して、溶質の濃度の低い方から高い方へ移動します。この時、水の移動を阻止するために溶液に加わる力のことを「浸透圧」と言います。
腎臓は体内の「水」と「Na⁺」のバランスを一定に保つ役割があります。そのバランスに「浸透圧」が関係します。
 
腎臓における尿生成の機能単位を『ネフロン』と言い、「腎小体」と「尿細管」からなります。
『腎小体』は「糸球体」と「ボウマン嚢」からなり、『尿細管』は「近位尿細管」「ヘンレループ」「遠位尿細管」「集合管」からなります。
 
腎血流の約1/5は「糸球体」でろ過され『原尿(約180L/日)』となります。
『原尿』は、血漿とほぼ同じ組成のまま「ボウマン嚢」を経て『尿細管』へと移動します。
「近位尿細管」では、水(浸透圧に応じて)やNa⁺(6070%)、グルコース・アミノ酸(ほぼ100%)など体内に必要なものも再吸収します。
「ヘンレループ」の下行脚で「水」が再吸収、ヘンレループ上行脚~遠位尿細管では「水」はほとんど再吸収されず、「Na⁺」などが再吸収されます。
なお、尿細管では再吸収の他に「分泌(血中に残っている過剰な物質を尿中に排泄する機能)」も行われます。
「集合管」では、ホルモンによって最終的な調整が行われます。バソプレシンによって「水」が、アルドステロンによって「Na⁺」が再吸収されます。
そして、残ったものは『尿(約1.4L/日)』となり腎盂へ移行、体外へ排泄されます。
 
体内の水分は「バソプレシン」と「ANP(心房性ナトリウム利尿ペプチド)」というホルモンによって調節されています。
「バソプレシン」は、尿として出るはずだった水分を再吸収するホルモンで、別名「抗利尿ホルモン」とも呼ばれます。
ANP」は、水分の再吸収を抑えるホルモンで心房から分泌される循環調節因子です。「バソプレシン」とは逆の作用を持ちます。
「アルドステロン」は、副腎皮質で合成されるホルモンで、Na⁺の再吸収と二次的な水の再吸収を促進するホルモンです。
 
尿量を増加させる作用のことを「利尿」と言います。
「利尿」には3種類の方法があります。
A:溶質利尿:Na利尿・・・Na⁺の再吸収が抑えられ、尿浸透圧が上昇することで、水の再吸収も抑えられ、尿量が増える。
B:溶質利尿:浸透圧利尿・・・浸透圧利尿薬自体が尿細管内の浸透圧を上げることで、水の再吸収を抑え、尿量が増える。
C:水利尿・・・集合管において、水浸透圧を高めている「バソプレシン」の作用を低下させることで、水の再吸収を抑え、尿量が増える。
 
『利尿薬』は、体の余分な水分を「尿」として排泄する薬剤です。
『利尿薬』はたくさんの種類があり、それぞれに作用も違います。
現在7種類プラス1種類あります。
①炭酸脱水素酵素阻害薬:アセタゾラミド・・・A
近位尿細管で炭酸脱水素酵素を阻害。緑内障・呼吸性アシドーシス・メニエール症候群などで使用されます。
 
②浸透圧利尿薬:マンニトール・イソソルビド・高張グリセロール・・・B
 近位尿細管~ヘンレループに作用。脳圧降下などで使用されます。
 
③ループ利尿薬:フロセミド・ブメタニド・トラセミド・ピレタニド・アゾセミド・・・A
 ヘンレループ上行脚に作用。
 
④チアジド系利尿薬:ヒドロクロロチアジド・トリクロルメチアジド・メフルシド・インダパミド・・・A
 遠位尿細管に作用。ほかの利尿薬と併用して、ナトリウム排泄目的で使用されます。
 
K保持性利尿薬:抗アルドステロン薬:スピロノラクトン・エプレレノン・カンレノ酸カリウム・・・A
K保持性利尿薬:Na⁺チャネル遮断薬:トリアムテレン・・・A
 集合管に作用。単独での作用は弱いため、他の利尿薬との併用が多い利尿薬です。
 
⑦バソプレシンV2受容体拮抗薬:トルバプタン・・・C
集合管にあるV2受容体に作用しバソプレシンの働きを抑え、水の再吸収を阻害。
 
⑧心房性ナトリウム利尿ペプチド:カルペリチド・・・細胞内cGMP濃度を上昇させことにより利尿作用や血管拡張作用を発現する。
 集合管にあるANP受容体に作用し水分の再吸収を抑え、水分を体外に排泄する。心不全の急性期に尿量確保が困難な重症・難治性心不全に使用します。
 
『利尿薬』は、たくさんの疾患に使われます。
「緑内障」には、①②。
「頭蓋内圧亢進」や「頭蓋内浮腫」には、②。
減塩が困難な「高血圧」や浮腫を有する「高血圧」には、③④。
ネフローゼ症候群による「浮腫」には③④⑤⑥。
心不全による「浮腫」や「呼吸困難」には、③④⑦⑧。
肝機能低下による「浮腫」には、⑤⑦。
などです。
 
参考資料:
薬がみえる Vol.1MEDIC MEDIA
病棟でよく使われるくすり(エキスパートナース201611月臨時増刊号)
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