漢方薬にも「副作用」はあります。
まず、『漢方薬の副作用』の考え方には3種類あります。
①誤治(ごち)
漢方医学的に、明らかに間違った処方であったために起こる作用のこと。
本来の意味の「副作用」ではありません。
②瞑眩(めいげん)
漢方薬を服用した時、極めてまれに一時的に症状が悪化したり、予測不能な症状が発現すること。(治癒過程で起こる。)
症状が好転することなく続くと「副作用」と考えます。
③副作用
生薬の成分の化学物質によっておこる症状のこと。
「漢方薬」は、たくさんの『生薬』の集まりでできている医薬品ですが、その『生薬』に含まれる主成分が「副作用」を引き起こす可能性があります。
注意が必要な『生薬』は以下の通りです。(カッコ内は含まれる成分名です。)
A:甘草(グリチルリチン)
・偽アルドステロン症(血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫、体重増加など)
・低カリウム血症(多尿、高血圧、疲労、筋力低下、神経機能の低下、不安、イライラ、抑うつ、睡眠障害、虚弱、便秘、乾燥肌など)
・ミオパチー(筋力低下、筋萎縮など)
一日量が2.5g以上で、偽アルドステロン症・低カリウム血症・ミオパチーの患者には投与禁忌。
B:麻黄(エフェドリン)
・自律神経系症状(不眠、発汗過多、頻脈、動悸、全身倦怠感、精神興奮)
・消化器症状(食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐)
・泌尿器症状(排尿障害)
特に、循環器系疾患・高度腎障害・排尿障害・甲状腺機能亢進症がある人やその既往歴がある人は、身長投与すべき生薬です。複数の漢方薬を服用するなどの時には特に注意が必要です。
C:附子(アコニチンなど)・・・中毒症状(心悸亢進、のぼせ、舌のしびれ、悪心)
現在の成分は減毒処理をされており、中毒は極めて低くなっていますが、発熱・発汗・暑がりで赤ら顔をしている人などで副作用が発現しやすいという報告があります。そのような方は、附子の総量に注意が必要です。
D:地黄(カタルポールなど)・・・消化器症状(食欲不振、胃部不快感、下痢)
漢方薬の副作用の中で、この地黄によるものが一番多いとされています。
E:大黄(センノサイドAなど)・・・消化器症状(食欲不振、腹痛、下痢)
瀉下作用があるため、高齢者や体力の無い人は「脱水」などに注意が必要です。
F:芒硝(硫酸ナトリウム)・・・消化器症状(腹痛、下痢)
瀉下作用があるため、高齢者や体力の無い人は「脱水」などに注意が必要です。
G:山梔子(ゲニポシドなど)・・・消化器症状(食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、下痢)
H:酸棗仁(ジジベオシドI,IIなど)・・・消化器症状(食欲不振、腹痛、下痢)
I:石膏(硫酸カルシウム)・・・消化器症状(食欲不振、胃部不快感、軟便、下痢)
J:川芎 (ブチルフタライドなど)・・・消化器症状(食欲不振、胃部不快感、悪心、下痢)
K:当帰(リグスチライドなど)・・・消化器症状(食欲不振、胃部不快感、悪心、下痢)
L:薏苡仁(コイキセノライドなど)・・・消化器症状(胃部不快感、下痢)
M:桂皮(ケイヒアルデヒドなど)・・・過敏症(発疹、蕁麻疹、発赤)
N:人参(β-エレメンなど)・・・過敏症(発疹、蕁麻疹)
漢方薬だから大丈夫!とは限りません。
食品にも含まれているものもあるのをお忘れなく!
複数の漢方薬を服用するなどの時には、過剰摂取にならないよう特に注意が必要です。
参考資料:基礎からわかる漢方の服薬指導(ナツメ社)
参考URL:
https://blogs.yahoo.co.jp/ito_pharmacy/69131346.html (「治療のために妊娠中でも使われる薬の例」と「妊娠中・授乳中に注意すべき漢方薬一覧」)
https://blogs.yahoo.co.jp/ito_pharmacy/69542009.html (「メーカーで異なる『漢方薬』)
https://blogs.yahoo.co.jp/ito_pharmacy/69393697.html (「ミイラ」と「ブス」と「かやく」と「やかん」と「くすだま」の関係)