人間は常に何らかの『記憶』を持ち生きています。
この前こんなことをして楽しかったなど日常的な「思い出」や、ギター・ピアノが弾けるなど、反復することによって得られる「慣れ」には『記憶』が関係しています。
『記憶』は、覚えておける期間によって「短期記憶」と「長期記憶」に分けることができます。
・短期記憶:保持期間が数十秒程度の記憶。記憶できる容量に限界がある。
・長期記憶:保持時間が長く、数分から一生にわたって保持される記憶。記憶できる容量は無限。(記憶の固定化)
なお、心理学的には「感覚記憶」というものもあります。
・感覚記憶:最も保持期間が短い記憶。各感覚器官に特有に存在し、瞬間的に保持されるのみで意識されない。
また「長期記憶」は、『記憶』の内容によって「陳述記憶」と「非陳述記憶」の2種類に分けることができます。
【陳述記憶(宣言的記憶)】
イメージや言語として意識上に内容を想起でき、その内容を陳述できる記憶。
①エピソード記憶・・・体験の記憶。(いい思い出や怖かった時などの記憶。)記憶障害などはこのエピソード記憶の選択的障害を指している。
②意味記憶・・・地名・単語など、学習で得た記憶。使うことがないと忘れてしまいやすい。
【非陳述記憶(非宣言的記憶)】
体の動きが伴う記憶。(内容を想起できない記憶で、言語などを介してその内容を陳述できない記憶。)忘れにくい。
A:手続き記憶・・・技能や習慣など。自転車に乗る方法やパズルの解き方などのように、同じ経験を反復することにより形成される。
B:プライミング・・・以前の経験により、後に経験する対象の同定を促進(あるいは抑制)される現象。混雑している街の中で、不意に知らない人物の顔が目に飛び込んで来た場合、実はその人物は毎日の通勤電車の中で知らず知らずのうちに見かけていた、などの場面で経験される。
C:古典的条件付け(連合学習)・・・パブロフの犬やアルバート坊やが有名。梅干しを見ると唾液が出るなど、出来事の関連性を学習。オペラント条件づけにも関係。
D:非連合学習・・・一種類の刺激に関する学習であり、同じ刺激の反復によって反応が減弱したり(慣れ)、増強したり(感作・憎悪)する現象。「慣れ」は、電車の中での騒音や振動への慣れ、服を着ていても普段は着ていることを忘れていることなどです。「憎悪」は、子供が一度注射の痛みを知ると2度目から恐怖におびえて逃げ回ることや、バリウムを初めて飲むときはさして抵抗を感じないのに、年々嫌悪感が高まることなどです。
なお、「学習」はCとDが関係しています。
『記憶』にかかわる部位は以下の通り。
①前頭葉:エピソード記憶の保存場所。(発達に一番時間がかかる場所)
②海馬:記憶の一時保存する、記憶したい情報を選ぶ場所。
③偏桃体:感情に関する記憶の保存場所。
④小脳:動きに関する非陳述記憶の保存場所。
⑤大脳基底核:非陳述記憶の保存場所。
⑥側頭葉:意味記憶の保存場所。
皆さんは赤ちゃんの頃の『記憶』はないと思います。
ほとんどの人は3歳より前の『記憶』はないとされています。
2~3か月目で周りの人の顔覚えますが、覚えていられるのは1か月くらいです。
1~3歳で言葉を覚えます。
3~4歳になると、いつどこで何をしたのか覚え始めます。
何かを『記憶』することは、人間にとってとても重要なことで、生活の一部でもあります。
何もしなくてもすぐ覚えるなど記憶力の良い人は、『記憶』する事柄を区別し、それぞれにあった『記憶』の残し方を無意識にしている人なのかもしれませんね。
参考資料:
やさしくわかる 子どものための医学 人体のふしぎな話365(ナツメ社)
参考URL:
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/プライミング効果
https://ja.wikipedia.org/wiki/オペラント条件づけ