「漢方薬」と言えば『中国!』と思う方も多いと思いますが、実は「漢方薬」は中国から伝来した伝統医学(中医学)を『日本で独自に発展させた』もので、日本の風土や文化に合った医学です。漢方薬や鍼灸などを含めた治療法は『東洋医学』とも言います。
漢方の歴史には3種類の書物が出てきます。
①黄帝内経(こうていだいけい):中国最古の医学書
漢方の基礎理論となる、人体の生理・病理などを記載した『素問』と、診断・治療・鍼灸などを記載した『霊枢』に分かれて記載されています。
②傷寒雑病論(しょうかんざつびょうろん):現代の漢方医学のバイブル
2書に分かれています。
・傷寒論・・・傷寒と呼ばれる急性病の過程と各病期に用いる処方が書かれています
・金匱要略・・・急性病以外の慢性病について書かれています
③神農本草経(しんのうほうぞうきょう):中国最古の薬物学書
生薬365種類の薬効について説明した、薬物の知識書で、薬効により3つに分類され記載されています。
・上品(120種類)・・・命を養う薬で、毒性がない又は弱いため、直期服用しても問題のないもの
・中品(120種類)・・・性を養う薬(養性薬)で、使い方次第で、無毒のものと有毒のものがあり、服用に注意が必要なもの
・下品(125種類)・・・病気を治す薬(治病薬)で、毒性が強いものが多いため、長期に服用できないもの
「漢方」は『個人的』で『経験的』なものを重視し、「心身一如」と心と身体を『総合的』にとらえ、心も含めた『全体的』なバランスを整えるという方法で、病気に対処する、という考え方があります。
「漢方薬」は天然生薬を複数組わせた複合成分です。
「西洋医学」は「外傷治療」や「外科手術」を必要とする治療に適していますが、「漢方薬」は「冷え性」や「疲れ」などの病気として捉えられないものや、「のぼせ」や「いらいら」などの不定愁訴などに対して適しているお薬です。
また、「漢方薬」には副作用が少ないため、高齢者など体力がなかったり副作用が出やすい人には使いやすいお薬となります。
このような「漢方薬」の特徴を、「西洋医学」と組み合わせることで、患者一人一人に合った治療を行う傾向が今の医療にはあります。
「漢方薬」は効果を発揮するのに時間がかかりますが、このような理由から「漢方薬」は使用されています。
参考資料:基礎からわかる漢方の服薬指導(ナツメ社)