知り合いや、肉親が病気などになったとき、あなたはどうしますか?
その人のために神様にお祈りしたりしませんか?
「他者のためにお祈りをする。」
しかし、効果はあるのでしょうか?
1988年に、ランドルフ・C・バードという研究者が『他者のために祈ること(とりなしの祈り)が治療に貢献できるのか?』という研究をしました。
393人の患者を2グループに分け、第1グループの192人には他者がその患者に対して(退院するまで)、患者1人につき3~7回「神に祈りをささげる」を、第2グループの201人には祈らないようにしました。
祈りの内容は『患者の早期回復』『合併症の防止』『死に至らないこと』などです。
祈りのスケジュールも組み込まれ、祈る人にはファーストネーム、診断結果、その他の状況が事前に伝えられていました。
結果はどうだったのでしょうか?
第1グループでは、良好が85%、変化なしが1%、悪化は14%でした。
第2グループでは、良好が73%、変化なしが5%、悪化は22%でした。
しかも、第1グループは第2グループに対して発作や薬の投与量が少なくて済んでいたんだそうです。
ということで、この研究で、『他者のためにお祈りをする行為は、患者の状態をよいものにする』という結果が出たのです。
しかし、この結果には批判もたくさんありました。
そして2006年に、ハーバード・ベンソンが再研究しました。
患者1802人をAグループ604人、Bグループ597人、Cグループ601人に分けました。
Aは、本人は祈ってもらえるかどうかわからないけど、実際は祈ってもらっていた状態
Bは、本人は祈ってもらえるかどうかわからないけど、実際は祈ってもらっていない状態
Cは、本人に祈ってもらっていると伝えておき、実際も祈ってもらっていた状態
です。
結果は、Aが52%、Bが51%、Cが59%の人が合併症を発現したり、死に至った、となりました。
今度はお祈りをされていると告げられていて、実際祈ってもらえていた人のほうが悪いという結果となりました。
原因として、パフォーマンス不安(祈ってもらているのに悪くなったらどうしよう、など)の発生が考えられるそうです。
行き過ぎたお祈りや、やってあげている感を出すなどの行為は、あまりいい結果を出さないということでしょうか。
決して、他者に対してお祈りすることが悪いことではありません。
行き過ぎはいけませんが、研究の結果によらず、そのような気持ちは大切に持っておくべきでしょう。
参考資料:パブロフの犬 実験でたどる心理学の歴史(著:アダム・ハート=デイヴィス)