『お薬手帳』を持ってくるとお薬代の自己負担が安くなる!
ということは、もう皆さんはご存知かと思います。
 
3割負担であれば40円安くなります。保険使用金額も入れたら全体で1120円、なかなかバカにならない金額です。
患者さんが『お薬手帳』を持っていくだけで、医療費を無駄に使わなくてすむ、そんな時代になりました。
 
しかし、全ての薬局が『お薬手帳持参で自己負担が安くなる!』『お薬手帳持参で医療費を削減できる!』とは限りません。
え!?話しちゃうやんか?と思う方もいると思いますので、説明します。
 
『お薬手帳の有無』に関係する金額の算定には「薬剤服用歴管理指導料」が関与しています。
「調剤報酬点数表」を見ると、「薬剤服用歴管理指導料」が4種類あるのがわかります。
A:薬剤服用歴管理指導料(6月以内に処方せんを持参した場合)38
B:薬剤服用歴管理指導料(6月以内に処方せんを持参した場合以外)50
C:薬剤服用歴管理指導料(特別養護老人ホーム入所者の場合)38
D:薬剤服用歴管理指導料(手帳持参なし・調剤基本料1又は4以外)50
4種類です。
 
ここで、Dにある「調剤基本料」とは何か?説明します。
「調剤基本料」とは、薬剤師が「薬局で処方せんに基づく調剤をおこなうこと」に対して支払われる報酬のことです。いわば薬局使用時の手間賃。
どこの薬局に行っても必ず取られる点数です。
 
「調剤基本料」は15まで&+1つあり、薬局ごとで算定方法は異なります。
い:調剤基本料1(妥結率50%超、基本料25に該当しない場合)41
ろ:調剤基本料2(妥結率50%超、受付回数と集中率)25
は:調剤基本料3(妥結率50%超、グループの受付回数、または集中率)20
に:調剤基本料4(基本料1の妥結率50%以下の場合)31
ほ:調剤基本料5(基本料2の妥結率50%以下の場合)19
へ:特別調剤基本料(調剤基本料15の届出をしない場合)15
その他:基本料の減算(かかりつけ業務をしていない場合)50%減算
 
ほとんどの薬局は「い」の「調剤基本料1」を、ドラッグストアなどの大手チェーン薬局は「は」の「調剤基本料3」を算定しているかと思います。
ですので、「い」を導入している薬局(ほとんどの調剤薬局)を使用すると41点=410円毎回かかります。
そして『お薬手帳』の有無で「薬剤服用歴管理指導料」の算定方法が変わります。
『お薬手帳』を持っていけば38点=380
『お薬手帳』がない、持っていかないと50点=500
差額が500380120
自己負担が3割だと120÷340
(全体で、『お薬手帳』があれば410380790円、『お薬手帳』がないと410500910円となります。)
 
ということで、「い」の「調剤基本料1」を算定している薬局は、【『お薬手帳』を持っていけば全体で120円、自己負担は40円が節約できる!】というわけです。
 
しかし、Dの「調剤基本料1又は4以外」を取っている薬局は『お薬手帳』を持って行っても持っていかなくても「薬剤服用歴管理指導料」は50点となります。
なんと、『お薬手帳』の有無で点数は変更しない、というような場合があります。
ただ、その場合、そのような薬局は、
ろ:調剤基本料2(妥結率50%超、受付回数と集中率)25
は:調剤基本料3(妥結率50%超、グループの受付回数、または集中率)20
ほ:調剤基本料5(基本料2の妥結率50%以下の場合)19
へ:特別調剤基本料(調剤基本料15の届出をしない場合)15
のどれかに該当するわけです。
 
大手チェーン薬局で「は」の「調剤基本料3」を算定している場合、毎回20点=200円の手間賃。
「薬剤服用歴管理指導料」はDで、『お薬手帳』の有無に関係なく一律50点=500
全体で200500700
 
大手ではない薬局(「い」を算定しているほとんどの薬局)を使用すると、『お薬手帳』を持っていけば患者さんは79070090円多く払うことになります。『お薬手帳』を持っていかないと、910700210円多く払うことになります。
何じゃ!結局、大手を使用したほうが90円または210円安いやん!という感じです。
 
しかし、『医療費削減を目的とする』のであれば、大手を使用すると全く削減できません。
みんなが大手を使用すると、医療費はますます膨れ上がるだけ、『お薬手帳』の存在感もなくなります。
 
薬局は患者さんが好きなところを選べますので、とやかくは言いませんが、皆保険という現実から考えると、少しでも医療費が削減できたほうが(保険を使用していない人たちのことも考えると)いいのではないかなぁ、というのが現実にあります。
 
最後に「調剤基本料1」を算定している薬局の「薬剤服用歴管理指導料」の算定方法をまとめてみました。この点数の取り方がなかなか面倒!下手すると薬局側が間違えて算定してしまうこともあります。
6か月以内に来局した時で、『お薬手帳』がある場合・・・A38点)を算定
6か月以上来局していない時や新患さんの場合で、『お薬手帳』がある場合・・・B50点)を算定
6か月以内に来局した時や同月2回目の来局時で、『お薬手帳』がない場合・・・D50点)を算定
6か月以上来局していない時で、『お薬手帳』がない場合・・・D50点)を算定
同じ50点でもBDがあり、ここは間違えが発生しやすい部分です。
点数は変わりませんので、BDを取り間違えても患者さん側には金額的に何も影響はないのですが、レセなどに影響があるため薬局は注意が必要です。(算定方法を間違えると『返戻』となります。)
自身がよく利用する薬局では、きちんと算定できているのか?領収書と一緒にもらう「明細書」を基に確認してもいいと思います。
 
参考URL
https://blogs.yahoo.co.jp/ito_pharmacy/69338872.html (調剤報酬点数表について)
http://www.geocities.jp/bwmrd078/itopha/007.pdf (絵本おくすりてちょうってなーに?)