妊婦さんは妊娠中、お薬を服用することに気を使います。
妊娠中は『胎児への影響』を考えなければならないためです。
 
しかし、妊婦さんに疾患があってもなんでもかんでも服用しないのは妊婦さんにとっても大変危険です。胎児に何らかの副作用のリスクがあるとわかっていても、そのお薬を使用せざるを得ないことがあります。
 
そのため現在、妊婦さんに服薬の必要性がある場合は、以下の4項目を考慮し、医師・薬剤師は慎重に判断しています。
①薬物の胎盤通過性
たいていのお薬は胎盤を通過しますが、特に「胎盤通過性」のある薬物の特徴として『分子量が小さい』『血漿タンパク結合率が低い』『脂溶性のもの』『イオン化していないもの』です。
胎盤を通過しやすい薬物として、経口血糖降下薬、ワルファリン、ジゴキシン、アンピシリン、ビタミンADEK、フェノバルビタールなどです。
 
②薬物投与経路による血中濃度の違い
 薬物を投与する場合3種類の方法があり、その投与方法で危険度が異なります。
『静脈内投与』されるお薬は、すぐに血液によって運ばれるので危険度「大」です。
『経口投与』されるお薬は、小腸で吸収され肝臓を経て全身へ行くため危険度「中」です。
『局所投与』されるお薬は、吸入器や点眼液などで、局所的に効くため危険度「小」です。
なお、妊娠中(帝王切開以外)の麻酔も「局所麻酔」を使用するため危険度「小」です。
 
③妊娠週数による薬物の胎児に対する影響の違い
 妊娠0(最終月経)~3週では影響が胎児に全く残らないか、流産になるかのどちらかになります。(All or Noneの法則)
問題になる薬物は、リバビリン、エトレチナートなどです。
妊娠初期(415週)に問題になるのが『催奇形性』です。影響は週が早いほど大きいです。
問題になる薬物は、一部の抗菌薬、リバビリン、エトレチナート、経口血糖降下薬、ワルファリンなどです。
 妊娠中期・後期(妊娠16週~出産)に問題になるのが『胎児毒性』です。
問題になる薬物は、NSAIDs、経口血糖降下薬、ワルファリン、ACE阻害薬、ARBなどです。
 
④薬物の胎児危険度(『催奇形性』と『胎児毒性』)
 妊娠時の服用による胎児への影響で有名なのが先ほども出てきた『催奇形性』と『胎児毒性』です。
『催奇形性』とは、胎児に形態異常(奇形)を生じさせる性質のことです。原因となるものには、お薬もそうですが、他に化学物質、放射線、ウイルスなどもあります。
『胎児毒性』とは、胎児の臓器機能や発育そのものを障害する性質のことです。
 
ただし、胎児への影響はお薬だけが問題になるわけではありません。
お薬は医師や薬剤師の指導の下、的確な服用をするよう、そして家族はもちろん周りの人たちも協力し、いろいろなことに気を付けてあげてくださいね!
 
参考資料:薬が見えるVol.2MEDIC MEDIA
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