稲荷信仰の形成

 

私たち一族は、先祖代々、お稲荷さまをお祀りしています。

氏神神社として伊予稲荷神社にしばしば参拝しております。

 

伊予稲荷神社の楼門

 

他に先祖とご縁のある神さまと言えば、海神-水神-龍神系の神さまとの繋がりが深いです。
 

今回は、神道の立場から稲荷信仰の形成と発展について見ていきます。

 

稲作は縄文時代晩期に中国大陸から渡来した倭族によって日本にもたらされました。

弥生時代になって続々と大陸、半島からの渡来人もやってきて、稲作はいよいよ盛んになりました。

倭族は古代中国の時代から太陽信仰と水神信仰をもっていた部族の総称です。


日本神話によれば、天照大神は孫の瓊々杵命(ニニギノミコト)に日本を治めるように命じました。

 

 

 


このとき、天照大神は自らが作っていた稲を人々の食物にするようにと瓊々杵命に授けました。

瓊々杵命はその命に従い、土地を耕し、稲を植え、実り豊かな国土経営に励みました。

 

以後、日本は豊葦原瑞穂国、すなわち豊かに稲穂が実る国になっていったのです。

弥生時代以降の日本人は稲作とは切っても切れない関係にあります。

古代の日本人は稲には「稲霊」(イナダマ)という不思議な力が宿っていると信じていました。

だから、昔は稲は神聖で大切な食物とされていたのです。

私たちにそうした実りや恵みをもたらしてくれる大自然の働きに対して、古代の人は神なる気配を感じ、稲や穀物の豊かな実りをもたらしてくれるカミがいると素朴に信じました。

また、主食としての米が豊かに実って欲しいという願いは祈りの気持ちを育み、稲成り=イナリという神のイメージを形成していったのです。

 

伏見稲荷大社御膳谷

 

 

お稲荷様の分類

 

 

 

 

上記の著書「稲荷信仰の研究」(山陽新聞社)によりますと、稲荷神は、祭神、祭祀対象、祭地、祭祀者によって以下のように分類することができます。

 

祭神による分類 解説
食物神稲荷 ウカ,ウケ,トヨウケ,イヒなどを冠した神。宇迦之御魂を祭神とする稲荷が該当する。
穀物稲荷 宇迦之御魂。伏見稲荷の発祥はこれに該当する。
祖霊稲荷 稲種を先祖の賜物とする信仰から祖霊と稲荷を同一視する。古墳,古墓に稲荷を祀るタイプも該当。
御霊稲荷 原始的霊魂観から死者の荒魂である御霊を鎮め祀る。お菊稲荷,源九郎稲荷など憤死したものを祀るタイプ。
氏神稲荷 祖霊稲荷の一種だが,本家が没落すると町内や村の鎮守神として祀られる。
村鎮守稲荷 伏見稲荷その他の大社寺稲荷(愛染寺も含む)からの御分霊を受けたものが多い。
屋敷神稲荷 家屋敷の一隅や入り口,畑の隅に祀ったタイプが多い。
山神稲荷 山頂または中腹の山上を祀る場所にある稲荷。伏見稲荷山の上社(一の峰)がこれに該当。
野神稲荷 山林,原野,田畑の中などに野神を稲荷として祀るタイプ。狐神とつながりが強い。
田神稲荷 田畑の間や塚の上に社殿を構えるタイプ。田中稲荷は伏見稲荷五社の1つ。
水神稲荷 湖沼の畔,滝のそばに祀られる稲荷。龍神稲荷,蛇稲荷。水神を仏教では弁天,神道では稲荷として祀る。
海神稲荷 ケツネ(食物神)を海の幸をもたらすものと見なし,漁業神となったもの。
王子稲荷 王子は海の彼方から帰り来る神。海神として海の幸をもたらす稲荷として祀られる。関東の王子稲荷が該当。
天王稲荷 岡山の最上稲荷が該当。荼吉尼天を経王大菩薩と同体とする。
護法稲荷 豊川稲荷が該当。高僧が航海の時に守護霊として出現した護法善神の荼吉尼天を祀る。
火神稲荷 鍛冶の神,自然神としての火神を稲荷として祀る。龍頭太の面を祀る伏見稲荷田社。王子稲荷。
福神稲荷 荼吉尼天(福徳),恵比須神(海神),大黒神(食物神)などの福神と稲荷が習合。
狐神稲荷 女化稲荷,葛葉稲荷,狐塚稲荷。ケツネ(食物神)の霊力を神として祀る。
荼吉尼天稲荷 荼吉尼天信仰が稲荷と習合したタイプ。
流行神稲荷 夢のお告げ,霊夢,巫師のお告げ,偶発的な病気平癒などがきっかけで稲荷を祀り流行神になるタイプ。
託宣稲荷 発祥や中興が巫師の託宣によったり,一般人の突然の神憑り(トランス)によって稲荷を祀る。
霊夢稲荷 託宣稲荷とほぼ同じ。職業的巫師を媒介しない場合が多い。
奇瑞稲荷 流行神稲荷の一種。歯痛稲荷,瘡稲荷,瘡守稲荷,勝負稲荷,安産稲荷,夜泣き稲荷,身代わり稲荷,厄除け稲荷など偶発的事象を契機に祀られたもの。
人名稲荷 祭神の稲荷や狐がもともと人名で,召使いや奉公人だった場合,巫師の名前で呼ばれる場合などが該当。


 

この分類を見ると、稲荷神が森羅万象とかかわっている神さまであることが理解できると思います。

 

海、山、田、畑、水、火などの自然、農耕地は言うに及ばず、人、もの、概念、心理現象などとことごとくお稲荷さまは結びついているのであり、密教の荼吉尼天信仰とも相まって爆発的に日本中に普及していった信仰であることがわかります。

また、祭祀対象については、①霊地、霊木、霊石、森、古墳、塚、墓、穴、藁祠(わらほこら)、化身動物などがその対象になっています。

化身動物については、神使である狐はもちろんですが、狸、狼、蛇、も<お稲荷さま>として祀られることもある点に注目したいものです。

 

たとえば、愛媛県の松山城北にある大杉神社には蛇と狐の合体したご神体が祀られているのがその一例です。

 

 

 

 

 

稲荷を狐であると考えている人も多いようだすけど、実は多種多様な場所、もの、動物、事象がご神体として<稲荷>の名の下に祀られているのです。

稲荷信仰の場合、中でも眷属として霊狐の存在が大きいのは確かです。

 

(つづく)

 

伊予稲荷神社/命婦社・久美社

 

 

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