京野 失礼ですが、奥さんは、小倉三郎君のお姉さんぢやいらつしやいませんか。
夫人 いゝえ。
京野 さうですか。それはどうも……。小倉といふのは僕の友人なんですが、丁度その姉さんが土屋といふ姓になつてゐるといふ話で思ひ出したんです。
夫人 土屋なんていふのは、ざらにありますわ。
京野 さうでせうか。でも、同胞のやうに似てゐるといふのは、さうざらにはありませんよ。また、失礼かも知れませんが、小倉つていふのは、奥さんそつくりですからね。
夫人 無理に似せておしまひにならなくつても、ようござんすわ。御退屈でしたら、お話のお相手ぐらゐ、してさしあげますわ。(腰をおろす。笑ふ)
京野 いやだなあ、さう皮肉に出られちや……。しかし、小母さんだつておんなじレコードには聴き飽きてらつしやる筈ですよ。
夫人 ちよつと、お待ちなさい。人のことを小母さんだなんて、あなたは、いつたい、おいくつ?
京野 僕、二十一です。小母さんは?
