ボーリングを始めて一年半になる。一向に上達しない。

二つの老人会リーグに所属して、合計26人のお年寄りと友達になったが、自分が一番の若者であるにもかかわらず、成績は常にビリである。彼ら、彼女らは、昔風のフォームで、ゆるーい球で投げるが、コントロールが良く、時々200点オーバーの高得点さえたたき出す。

 

最初は、ハウスボールでリーグ戦にゲスト参加した。

ボールを振り上げたとたんに指が抜けて、後ろに落とした。握力がない。

やっとマイボールを手に入れて、指にピッタリの穴をあけて練習を始めたら、親指が抜けずに、投げたボールに引きずられて油を引いたレーンに飛び出し、やっと抜けたボールが真上に飛んで、スライディングした自分の頭をかすめて落ちてきた。危うく、大怪我をするところだった。

以降、親指の穴には、ベビーパウダーを刷り込んで抜けやすくした。

親指の爪が、早々に割れたので、いまだにテープでガードしている。

 

なぜ上達しないのか、理由は分かっている。

ローダウンにこだわっているからだ。

 

魚を三枚におろすことができる。YouTubeでやり方を覚え、場数を踏んだ。

ボーリングも、まずYouTubeで最近の投げ方を調査した。

ローダウンが格好良かった。ボールがピンの近くで鋭く曲がり、破壊力が半端ない。

一般的なフックボールか、ストレートしか投げない老人たちの中で、ひとりローダウンのパワーボーリングを格好良く見せつけようと考えた。

 

フックボールは、ボールを離す(リリースする)とき、中指と薬指でボールをひっかけるだけなので、回転が少ないが、ボールの軌道がブレにくく、コントロールをつけやすい。

ローダウン(日本語英語で、米国では、サムダウンで通じるらしい。)は、リリースの時、手首で回転を掛けるので、よく曲がる。その代わり、軌道をコントロールしにくい。

 

ローダウンを始めて、2か月余りして、連続6ストライクで200点オーバーを出し、マスターしたと勘違いしてしまった。それから半年、フォームを崩し、アベレージ120点程度まで下がり、悪戦苦闘した。

YouTubeの解説は、各人各様で、正解が見つからない。ひたすら、プロのスローモーションビデオでフォームを研究した。理屈は、Adachiプロの、「肘を曲げて落とすだけ。」が正解だと思うが、最初に見たSKYtomoの手首でボールを回転させる動画の悪影響で、長い回り道をしてしまった。

 

そして更に3か月、やっと復活し、自身最高の219点まで出した。そこで欲が出た。

 

プロが使うボールを使えば、破壊力がアップしてアベレージ200点も夢ではないかもしれない。

ボールを新しく購入した。

 

最初に使ったマイボールは、ボーリング場で販売している、穴あけ込みの格安ボール、Gyration(ジャイレーション)。一年半で約500ゲーム投げたので、表面の傷も目立ち、そろそろ引退させることにした。

新規購入したのは、Physix(フィジックス)。全日本プロ選手権で、決勝に残ったメンバーの半分以上が使っていたという人気のボールだが、品薄で手に入りにくいとの情報があった。たまたまAmazonで見つけたので、つい買ってしまった。

 

 

初めて試用して驚いた。

曲がりすぎる。これまで使っていたボールと比べて、ボール一つ手前で曲がるような感覚がある。

これまでと同じ球筋で投げると、曲がりすぎてヘッドピンまで届かずにカーブして、左側のガターに飛び込んでいく。

 

スピードを上げて、フッキングポイント(レーンの油が切れて、曲がり始めるポイント)を奥にしようとしたら、今度はレーンの油が切れる前に、右側のガターに飛び込んでしまう。

一ゲームでガター4個、スコアが100を切ることも珍しくなくなった。

 

これまで、ローダウンで、ボールを如何に回転させるかばかり考えていたが、ボールの回転軸を考えて、如何に回転を抑えるかを工夫することになった。

理屈には詳しくなったが、身体がついてこない。現在のアベレージ120点程度。

先日やっとターキー(3連続ストライク)を出したが、まだ180点に届かない。

 

ボールを変えてひと月半、まだまだ悪戦苦闘は続く。来月から、オイルパターン(レーンの油の塗り方)が変わる。ロングオイルはいい方向かも知れない。

 

フックボールかストレートボールで、おとなしく投げてスコアアップを目指す道もあるが、面白くない。高回転のローダウンで、迫力のあるボーリングを目指す。

 

先日、珍しくストライクを取った時、同じリーグ戦で楽しんでいる先輩のおじいさんが言った。

「まるで、大リーグボール1号だね。」  おじいさんと言っても、同じ世代だ。

 

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