85日(木)
 
娯楽の少ないコミュニティーの生活を少しでも快適にするために、日本食レストラン、定期的なテレビドラマなどのDVD入荷、そして、日本から送られてきたり、帰国した人が置いて帰ったりした古本をそろえたミニ図書館がある。DVDはほとんど見つくしたので、最近は図書館を利用している。ある時から、作家の名前順に整理してくれたので、非常に使いやすくなった。
 
6月初め、変わったタイトルだと思って手に取った、桐野夏生(きりのなつお)の「OUT」を読み、すっかり桐野ワールドに取り込まれてしまった。他の作家には目もくれず、片っ端から読んで行った。失礼なことに、それまで、この作家が男性か女性かも知らなかった。
(同年代の女性作家です。)
 
OUT
ダーク
グロテスク
顔に降りかかる雨
魂萌え
ローズガーデン
リアルワールド
アンボス・ムンドス
玉蘭
ファイアボール・ブルース
残虐記
水の眠り 灰の夢
光源
 
毎晩、帰宅して食後寝るまでの間に読んでいたら、2か月で13冊も読んでいた。
そして、まだ手元に「東京島」と「ファイアボール・ブルース2」がある。ミニ図書館では、もうそろそろこのあたりで最後になるようだ。
 
一部の小説は、探偵ミロのストーリーのシリーズ物だが、順不同で読んだため、成人したあとの物語を読んだ後、両親のストーリーを読んだりして、それはそれで、将来の姿をわかった上で読む面白さもあった。
 
主人公だけでなく、出てくる人間ほとんどの視点と心理描写がある。ひとつの出来事でも、あの人はこう考えているが、実はこの人はこう考えていると、犯人、被害者、美人、そうでない人、全ての立場を平等に心理描写している。物語は、決して単純にハッピーエンドでは終わらない。
 
毒のような魅力がある。
しかし、まだ夢も希望もある、人生に対する抗体のない若い人が読んだら、その毒で人生を狂わせてしまうくらいの強烈な毒がある。人生、ピークを過ぎた人が読んだ方がいい。特に、「グロテスク」は、人生に対する価値観を考えさせられる。
 
当地で初めて手にしてファンになった作家は、宮部みゆきに次いで二人目。
さて、そろそろ、また別の掘り出し物を探そう。
 
 
 続・紅海釣り日記」《目次》へ戻る