2010年のトリノ王立歌劇場の公演は前回触れたラ・ボエームの他にラ・トラヴィアータが4回上演された。こちらの方は最終日の1回のみ聴いた。
この曲は特にお気に入りというわけではないが、確認してみたらかれこれ20回近く聴いていた。
印象深いヴィオレッタ役は初期の頃に聴いたルチア・アリベルティである。特に第2幕が印象深く残っている。独特なクセのある声だが自分にはハマった。その後何回か彼女を聴いたが後年になり高音を鼻に抜くように歌うようになり、気になっていたが(それは録音にも現れている) 聴き手の感情移入を阻害するように思えてきた。
他には意外にと言っては失礼だが、アンナ・ネトレプコとアンジェラ・ゲオルギュが印象に残る。声自体はどちらもこの役に対しては好みではないが、役に対しての表現が適切で好感は持てた。どちらも代役だったが聴く機会があって良かった。
最近ではマリーナ・レベカが印象に残る。
一方のアルフレード役は若い頃のロベルト・アラニャとマルセロ・アルバレスが柔らかい声で情熱的に演じていた。最近のアントニオ・ポーリも真摯に役に取り組んで好感が持てた。
ジェルモン役は全曲ではなく抜粋のコンサートではあるが、レオ・ヌッチが文句なく素晴らしかった。二重唱の場面もそうだが、その後の有名な独唱は慈愛に満ちた歌で、それまでその部分をあまり好んで聴いていなかった自分も思わず聴き入って感動した。
さて今宵はというと正直あまり覚えていない。せっかくのDessay だが申し訳ないくらい記憶にない。もう一人以前聴いたエディタ・グルベロヴァも同じように印象が薄い。最初の幕は少しうる覚えのようにかすかに思い出すが、後半はほぼ記憶にない。2人とも高音や技巧的表現を得意とし透明感ある声が共通している。そのような彼女らの特性に魅力を理解しつつ一方でこの役に対して自分には物足りなさも感じる部分がある。より劇的な表現を望んでいるということかもしれないが。あくまで個人的趣向だと思う。そんな2人もモーツァルトやフランス物は素晴らしいし、いつも心地よく聴いている。
上演回数は多い作品だが満足感を得る機会はあまり多くない。
高名な歌手であっても容赦なく高い要求をするヴィオレッタという役はある意味恐ろしい。マリア・カラスやレナータ・スコットがいかに素晴らしく、類稀な歌手だということだろうか。
