サイドストーリー14 諦めの悪い男~中編2~ | ぶらねの書きもの部屋

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「ベルサイユのばら」の二次創作をメインに書いていこうと思っています。原作を逸脱した話もあります。不快に感じる可能性のある方は、スルーよろしく。
なお原作者様出版社等とは一切関係ございません。

【諦めの悪い男~続きです。~】


「どうだ?少しは落ち着いたか?」

しばらく経ってオスカルが静まった後、フェルゼンは彼女と長椅子に並んで座り、ブランデーを勧めながら、そう声をかけた。

「ああ、ありがとう。」

「何があった?言いたくなければ、無理には訊かないが。」

「…男というものは…」

「うん?」

「一人の女では、満足できないものなのか?」

「……」

「どうなのだ?」

「そうだな…」

フェルゼンはゆっくりと、逡巡しながらも答えを導き出した。

「私は、確かにアントワネット様を愛している。だが…君を愛しているのも、嘘偽らざる気持ちだ。」

そう言いながら、彼はオスカルをじっと見つめた。

「勝手なものだな。」

オスカルは、プイと顔を背けた。

「ハハッ…何とでも言ってくれ。これが私の真実なのだから、仕方ない。ところで…アンドレが浮気でもしたのか?」

途端に、俯いていたオスカルの顔が曇った。

「わからない。あれが、そうなのか…それとも、ただ偶然居合わせただけなのか…。」

「彼は、何と言っているんだ?」

「何も…いや、その前に私が飛び出してきたから。」

「まずは、彼に確かめるのが先決だと思うが。」

「そんなこと…こわくて出来ない。」

オスカルは首を左右に振った。

「気持ちは理解できなくもないが、それをしないことには、はじまらない。そして、その答えによってその後どうするか…それは、君自身が決めることだ。」

「……」

「彼が君への裏切りを否定した場合、このときは問題ないだろう。ただの誤解なのだからな。もっとも君がそれを信じられなければ、話は別だが…。」

「もしアンドレが、あっさり認めたら…私は…」

「どうする?すべてを許して、もう一度やり直すか?それとも…とっとと見切りをつけて、私とヨリを戻すか?もっとも、そうなれば私は大歓迎だ。」

「こんなときに、何を…」

「別に、フザけてなどいない。私は大真面目だ。君だって、本当は私を必要としているのだろう?現に今夜、こうして私を頼ってきたわけだし。どうだ?今夜は、泊まっていかないか?」

フェルゼンはオスカルの肩に手をまわし、彼女をじっと見つめた。

オスカルは、ただ動けなかった。

しだいに唇と唇が近づき、いまにも触れ合おうとしたところで

コンコン!

ドアをノックする音に遮られた。

「オスカル様、ジャルジェ家からお迎えの方が、お見えですが。」

侍女が、そう告げた。

「そうか。ではフェルゼン、私はそろそろ失礼する。急に邪魔をして、悪かった。」

オスカルは、緩んでいた襟元をあわせて、身づくろいをした。

「そうか、帰るか。」

フェルゼンは、落胆の色を隠さなかった。

迎えに来たのはアンドレだった。

二人が玄関までやってくると、彼は姿勢を正してフェルゼンに挨拶をした。

「フェルゼン伯爵。夜分に失礼を致しました。」

「とんでもない。私も、思いがけず楽しかったし。それより本当に帰るのか?私としては、泊まってもらっても一向に構わないのだが?」

フェルゼンは、もう一度オスカルを見た。

「ああ、今日は失礼する。ありがとう。」

「また、いつでも来い。私は、いつだって大歓迎だ。」

二人のやりとりを、アンドレは従僕然とした微笑みで見つめていた。

帰る道すがら、オスカルとアンドレは馬をゆるゆると進めながらも、ずっと無言だった。

重苦しい沈黙が、ずっと二人を包んでいた。

屋敷に帰りついてから、アンドレはすぐにオスカルの部屋へ急いだ。

「話がしたいのだが…いいか?」

彼は、躊躇いがちに訊ねた。

オスカルは無言のまま、部屋へ入るよう促した。

オスカルは、すでに夜着に着替えていた。

「どういうことだったのだ?あれは。」

アンドレがドアを閉め部屋へ入ると同時に、オスカルは後ろ向きのままアンドレに問うた。

静かで低い声だった。

「聞いてくれ、オスカル。おまえに誤解させるような軽率なマネをしたことは謝るが、俺とマルゴは何でもない。正直、あの女には迷惑しているんだ。信じてくれないか?」

オスカルは背中を向けたまま聞いていたが、ふいに振りかえりアンドレにしがみ付いた。

「わかっている、おまえが私を裏切る筈がないのは。だけど、私は…私は…。」

彼女はアンドレの胸に顔を埋めたまま、嗚咽した。

「すまなかった、オスカル。俺が悪かった。すまない…。」

アンドレはオスカルを両腕でしっかりと抱きしめた。




つづく