昨日の日ロ首脳会談後の共同記者会見でプーチンが苛立つ場面があった。日本のTBS記者の質問内容に対して明らかに苛立ちを見せていた。

TBS記者 
安倍首相に対して
 「北方領土ではインフラ整備が進んでいるなど、ロシアによる実効支配が強まっている。日本にとっては、受け入れ難いような状況になっていると思うが、安倍総理はどのような認識をお持ちか」

プーチン大統領に対して
 「ロシア政府は今後も同じような政策を北方領土に対して継続する考えか。そしてその場合、日本との領土交渉への影響については、どのように考えるか」


安倍首相は冷静に無難に質問をかわしていましたが、プーチン大統領の質問に対する答えはこうだった。

プーチン大統領
 「私が今、注目したのは、記者の方が、この質問を紙から読み上げていたこと。この質問を、多分ほかの人からもらったと思うが、その人に対して、次のことを伝えていただきたいと思う。もし、この(領土問題解決の)プロセスにおいて、妨げを起こしたいならば、それも可能。 そのためには、激しくて直接な問題、直接な質問をして、同様に激しくて直接な回答をもらうことができると思う」


 


プーチン大統領は共同記者会見の間、終始不機嫌そうな顔をしていました。少なくともにこやかではなかったです。その表情から今回の会談ではたいした(外交上の)進展はなかったんだなというのは伺えました。北方領土返還の交渉再開といったって、10年ぶりか知らないがそんなことはたいした進展ではない。

共同記者会見を見て僕の個人的な感想は、プーチンは「こんなに中身の薄い会談でわざわざ共同会見を開く意味があるのか」くらいに思っていたのではないかと思う。終始不機嫌そうな顔をしていたので、僕はそう感じた。安倍首相は「プーチン大統領と個人的な信頼関係を築けた、北方領土問題解決を加速する環境作りができた」と今回の会談での日ロ関係の進展を強調していましたが、安倍首相とプーチン大統領では明らかな温度差があったと思う。なにも安倍首相の批判をしたいわけじゃない。安倍首相はよく頑張っていると思います。僕の感じたままを書いているだけなのであしからず。


ネット上ではプーチン大統領を苛立たせたTBS記者の質問を酷評する声も多いみたいですね。僕もその声に同感です。「ジャーナリストとしてあの場であの質問をするのは当然だ」と言われそうですが、聞かなくても分かることをわざわざ聞く必要はないだろと言いたい。TBS記者のあの質問はなんとか良好な日ロ関係を発展させたいと努力している安倍首相の足を引っ張るものだったと思う。そして明らかに日本の国益を損ねる質問だったと思う。あの質問をしたTBS記者は紙に書かれた質問を読み上げていたが、その紙を持つ手が震えていたため紙がカサカサ音を立てていた。上からの命令で、あの場であの質問をしなければならない現場の記者の大変さも分かりますが、その場の空気を読めとは言わないが、日本のジャーナリストなら日本の国益を損ねないかどうかくらいは考えて欲しい。


日本政府や日本のマスコミはいつまでも北方領土返還に固執していますが、これだけ長い間ロシアに実効支配され、現地にはすでに永きにわたるロシア人の生活もある。はっきりいって北方領土返還なんてもうあきらめたらどうなのと思う。いつまでも固執していたところで、逆にかえって高くつくことにだってなりかねない。どうせ沖縄返還の時みたいに、ただでというわけにはいかないんだから。それに北方領土が日本の領土といったって、せいぜい江戸末期か明治以降から終戦の1945年までの長くても100年くらいのもんでしょ。そんなに声を大にしていうほどの日本の領土じゃないと思うんだけど。ましてや相手は核と拒否権を持つ国で、こちらは経済的には豊かだが核も拒否権も持たない人口減少の衰退国。こちらの言い分が通るなんて限りなくゼロじゃん。やめとけ、やめとけ。絶対高くつくって、と思います。北方領土問題はもう捨てることで良好な日ロ関係の発展を加速させ、資源・エネルギーなど他の分野で多大な国益が期待できると思うんだけど。米ソ冷戦時代が終わりアメリカとロシアの大統領が握手している時代なのに、日本の外交はあまりにも硬直していないかと思う。まあ、日本の外交が大した成果をあげられないのは、1年ごとに首相が変わる点も見逃せないけどね。