『男社会がしんどい』第1話〜第4話



先日読了した『上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください!』関連本。こちらは全編、田房永子さんによる漫画で構成されています。
改めて、漫画による表現って、すごい。
シンプルな言葉とイラストで、あらゆる情景や感情がぐんぐん伝わってきます。
田房さんの描かれる漫画って究極に無駄を省いて必要なところだけドーーン!と出てくる感じが絶妙です。盛りすぎでも、削りすぎでもない、絶妙な情報量。
だからこそダイレクトに伝わってくる、「男社会」日本のシビアさ……
いやー、まさに、「しんどい」ですよねえ…って、タイトルそのままの感想になってしまいます。まだまだ序盤ですけれど。



痴漢被害のこと電車とか公共の場で知らない相手から性被害を受ける「痴漢」…私は都市部で通学をしていなかったこともあって、実のところ遭遇しないままここまできました。発覚の場に居合わせたこともなし。
もしかすると友人知人は経験しているのかもしれませんが、そもそも痴漢について誰かと話すことすらなく。
だからこれまではなんとなくのイメージで捉えてきたんですけれど、いやはや、酷いものですね痴漢って……漫画越しに被害者の立場を追体験して震え上がりました。
無視されてきた痴漢被害者どうしてここにきてやっと「痴漢被害者」の実際を知れたかというと、これが一番の衝撃だったのですが、近年まで痴漢被害に焦点を当てた書籍やニュース、考察記事はほとんど無かったそうなんです!
「はじめに」で書かれていましたが、田房さんはこの本を出すにあたって「痴漢犯罪被害についての本は出せないと断られた」そうなんです、2016年の段階で。2016年て…めちゃくちゃ最近じゃないですか!?
確実に被害に遭っている人はいたのに、社会が無視を決め込んでいたんですね。そりゃあ知識が一般に浸透していないわけだ。
臭いものには蓋をする精神なのか、はたまた臭いものとすら認識されていなかったのか?
「痴漢は犯罪です」は26年前からいまや電車や駅でよく見るポスターのこのフレーズ。
痴漢被害に遭いやすい「制服を着た」状態から脱して以降利用するようになったためか、本当にこれまでは痴漢に縁がなくて。
恥ずかしながら「席を譲ろう」と同じような決まりきった標語かなとスルーしていました、が……
わざわざ言葉にしないと通じない現実があったんですね。痴漢は犯罪なんて当たり前じゃん、と思いきや、その意識すらまだ日が浅いようで。このフレーズが公共の場で許可されるようになったのって、1994年のことだそう。
それまでは「痴漢」や「性暴力」の言葉を公に使うことがタブーだったそう。
それってなんて……痴漢加害者に都合のいい世の中。そして被害者にはしんどすぎる世の中。
変わりつつある世の中知れば知るほど自分が身を置いている社会の実情にがっかりしますが、それでも希望を持てるのは、この本が出版されていて誰でも手に取れる状況にあること。
先述のように、2016年時点、たった4年前では世に出すことすら無理だったんです。なんという大きな前進!
そこには2017年から始まった#metoo運動などの影響もあるようですが、やはり時代の流れを感じます。きっとこれからますます、無視されてきたものが暴かれて解かれてゆくのだと信じています。



実はここまで↑の話は漫画アプリの無料公開の範囲内で読んでいたのですが。やっぱり買おう!と決めるに至りました。
面白くて最後まで読みたいというのもあるけれど(アプリの無料公開は途中まで)、それ以上に「私もその件、関心があります!」という一票をこの本に入れたいなって。
一人分の購入なんて出版業界にとってはきっと微々たるものですが、塵も積もれば山となる。
「描いてくれてありがとう!」
「出してくれて、届けてくれてありがとう!」
……の想いが、わずかでも作者さんと出版社さんに数字となって届きますように。
あとは単純に、これまでなんとなく抱えてきたモヤモヤが言語化・イメージ化されていて小気味良いのもひとつ。
無意識の領域を意識的に捉えることができたら、自分の生活レベルでも何かしら変えていけると思うのです。どうかどうか、子どもの代にはより生きやすい世の中を。
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